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俺らの結婚が、社内報に大きく載った。二人の馴れ初めのエピソードとして海で救助した話が添えられた。もう広く世間にあの写真の真実を知らしめたから、説明して歩き回らなくてもよくなった。それは、過去からの解放だった。櫻井「上海蟹で祝おうと思っていたのに」松本「上海のお二人用の部屋、凄く上等なのを用意していたのに」相葉「勿体ないから、俺たちで住んだよ」上海から戻って来た3人が合流して、俺たちは再び5人のチームになっていた。もちろん、上海と東京で助け合ってきたのは間違いなくこの5人だ
(和)それは魂を縫い合わせるような夜だった俺と智の和解の夜・・・和解なのに支配されていたそれを俺自身、望んでいた・・・前の合わせを解かれてお月さまの前に差し出されると智「・・・綺麗だ・・・」俺の裸体を耽美派の画家のようにその指先で辿っていく・・・智「離れている間もずっと、このカラダを抱いていた」・・・嘘・・・指先でつーっと骨の一本一本をそれに沿う筋肉の流れを確かめるように俺のカラダをなぞっては泉からドクドクと溢れてくる発露
(和)団地の下でキャッチボールするのは町内の爺ちゃん達のおかげだった。あの人達、俺らが学校に行ってる間はゲートボールして俺と智が投球練習する時にはタバコ吸いながら、とかビール片手に、とか爺ちゃん「ワシらを甲子園につれてって♡」浅倉南の真似をする。近所の公園はどこもボール禁止だから助かっていた。だけど加減してた。グラウンドで投げるときの80パーくらいに。それが智にバレた。🌼もえこさんの絵です💛智「もっと本気で来いよ」何を怒ってんの?高校への野球推薦が決まった。
目覚めた時、二宮は居なかった。俺が渡したタクシー代はベッドの脇のテーブルに置かれていた。連絡先を聞けなかった・・・けれど翔くんから聞けると思っていた。俺は名古屋に一度帰らなければならなくて・・・だけど気になって二宮に繋がる有力な手段として翔くんに電話をかけた。翔📱「あ、智さん。おはよう、折り返すからさ。今ちょっと大変なの」俺はもしかして・・・と思い智📱「二宮のこと?」翔📱「どうして知ってるの?」いや、何も知らない。智📱「何があった?翔くん、頼む。教えてくれ」翔📱「・
大野さんを記憶の中に閉じ込めようとして一週間が経ったある日のこと。翔「こちらが新しく我が社へ入られた大野智さんです。僕の大学時代の先輩です」和「・・・え・・・?」智「大野です。よろしくお願いします」翔「では、仕事の引き継ぎを・・・、あぁ、そうだ。君、菊池くん、君も一緒に聞いて勉強しておきなさい」菊池「はい!」和「覚えていただきたいのは、出荷の際に添付する、こちら」智「shippingadviceとinvoice、送り状だな」和「そうです。形式は・・・」智「製品について教え
(智)俺は高校二年生、野球部所属。ひとつ下の和也は保育園からの幼馴染。同じ団地に住んで小学校も中学校も一緒だった。野球を始めたのは和也が先。小学校のリトルリーグで和也が野球をやり始めてキャッチボールの相手をしてやるうちに俺も駆り出されたんだ・・・何故なら。和也の豪速球を捕れるのが同じ中学では俺だけだったから。中学2年の春に、担任だった野球部顧問に半ば無理矢理に入部させられたんだ。俺はそれまで美術部にいた。先生「二宮の投球を受けられるって?」中学の野球部で、誰も捕
(智)撮影も終盤を迎えていた。終わったら、さ。全部終わったら。和とふたりで島へ篭りたい。もう長いこと本当の意味でのふたりきりから遠く離れていた・・・俺は海を見るたびに溜息をついて和「・・・どうしたの?」智「ふたりで逃げたい・・・」ある日、俺は愛しい人を巻き添えにして一日だけ。そう。一日だけ、逃避行を決行した。📧日付が変わるまでに戻ります。一言、そう残して・・・(雅紀)かなりの場面の撮影を終えてスタッフさんの数も大幅に減っていた。近くの料理旅館の有名な鯛料理
(智)いつものキャッチボールが和の100パーじゃないと気付いて俺は何故だか傷付いた。手加減されていることにまずムカついた。潤には100パーで投げてんの?俺しか入り込めないはずの領域に他の人間がいると思うとイライラはおさまらなかった。智母「今日はね、和くんのお祝い。お隣でパーティーよ」智「俺、行かない」智母「は?今日は何も用意してないよ。和くんのお祝いだっていうのにしけた面してんじゃないよ」俺はぷいと自分の部屋に篭った。・・・・・・・・🕕うっすい壁。隣から笑
夕日が沈んでもしばらく西の空は紅く染まっていた。和の目からポロポロと涙がこぼれるのを手で拭うと、その手を愛おしそうに撫でる。お前・・・俺への愛がだだ漏れなのに和「今日で最後にして・・・」そんな残酷なことが言えるんだな。智「酷くしても、いい?」一度大きく目を見開いて、頷いたから抱き上げて寝室へ運んだ。そぉっと寝かせてクルンとうつ伏せにして背中に俺の痕を残していく。唇💋でつぅーっと辿りチュクっと吸い付くと簡単に俺の痕がつく。触れるか触れないかの刺激を脇腹に与えて耳元
昼間の余韻が残るカラダは気怠くて和は匂う美しさを隠せずに色香がこぼれていた。どんどん美しくなる俺の和。手に入れたくて俺に括りつけておきたくてもう、必死だった。夕食に富浦の魚介の恵みを頂いた後俺らは小さな花火をするために浜に下りた。線香花火の優しい灯りが俺の和を闇に浮かび上がらせる。和は花火を見ていて俺は花火をする和を見ていた。和「儚い美しさだね」智「そうだね」和「俺・・・この線香花火くらいでちょうどいいって思ってた」智「どういう、意味?」和「幸せはさ、そんな打ち上
あの夏を思い出していた。まだ中高一貫校に通っていた夏。男子は全員強制参加の遠泳の為に茨城県富浦市の浜に臨海学校に来ていた。柔軟体操やマラソンもあった。偶々できてしまったバク宙を見た先生が専門家だぞと連れて来た。この人を。先生「大野くんだ。身体能力がズバ抜けて高いうちの卒業生だ。夏の短期バイトで臨海学校の引率を引き受けて貰っている。言うことを聞くんだぞ」和「大野先生?」智「大野くんって呼んでくれる?先生なんてもんじゃないんだ。ただのバイトだし」和「時給いくら?」智「1000
部長に呼ばれて、俺と和は会議室に入った。例の写真がプリントアウトされていた。部長「大野が送った説明文書を読ませて貰った。二宮からも事情を聴きたい」和「はい。十年前のことです。中高時代の臨海学校で、茨城県富浦に行きました。遠泳があって、前日から体調の優れなかった私は、残り1/3程になった時、クラゲに刺されてバランスを崩し、海に溺れかけました。その時、助けてくれたのが、こちらの大野さんです。海水を吐き出させてくれて、人工呼吸をしてくれて、水を飲ませてくれました」部長「・・それ、社内報に載
次の日、俺は和を連れて、まず中野坂上に戻り、二人できちんとした服装に着替えそれから菓子折と酒を手土産に和の両親を訪ねた。二宮父「智さん、この前はどうも」二宮母「智さん、いつも有難うございます」智「お父さん、お母さん、この前お話をした通り、和也さんと人生を歩いていきます」二宮父「証人欄に署名をするよ。書類を出して。智さんのお父さんがここになさるだろうから」和のお父さんは証人欄の二人目の所に署名をくれた。二宮母「お茶を入れましたよ。ご飯も用意してあるけれど、三鷹へも行くのでしょう
和が捜査協力に呼ばれて警視庁中野警察署に行くのに同行した。関係を確認されて、廊下でお待ちください、と言われ、和の荷物と携帯電話を預かった。和が奥の個室に入って行くのを見ていた。ドアは開いたままにしてくれて中は見えないけれど、声も聞こえないけれど安心して待っていた。暫くして、交替で俺も呼ばれた。和にこの廊下から動かないで、と念を押すと近くにいた婦人警官の叔母さんが和の隣に座ってくれた。俺はその人に一礼をして、部屋に入って行った。刑事「和さんのパートナーの方ですね」警察は
西新宿で友人と飲む約束をしていたから都庁の前で煙草を吸って待っていた。高層ビルからエレベーターが次々に着きスーツを着た人々が降りてくる。終業時間だな。俺は新幹線の予約を気にしていたから愛くるしい男が目の前に立っていることにしばらく気付かないでいた。和「あの、オオノさんですか?」智「あ、はい」和「これ、上司から預かった伝言です」メモを開くと見慣れた友人の字で📧翔「ごめん。智さん。仕事でやらかして、今晩は抜けられない。また日を改めて、その時は俺がご馳走します。翔」・・・そう
一度、中野坂上に寄ってスーツを着替えた。和と二人、丸の内線に乗って一駅の通勤。西新宿から真夏の太陽を浴びて出社した。・・・ん?・・・なんだ?人々の目線が刺さる。というか、不自然に目を逸らされる。・・・早速、来たか・・・翔「智さん!あ、ニノおはよう。智さん!」智「翔くん、昨夜はありがとね」翔「これ!!メールでばら撒かれているよ」・・・来ると思っていたから予想通りの行動に、逆に安心さえした。他に手を持っていないのか。俺の中でタブーではなくなったその写真をPC上で確認して、
相葉「松本のことは、二宮は知りません。黙っていて貰えませんか。俺も翔さんも松本から口止めされています」相葉さんから大切なことを言われた気がするけれど、それどころじゃなかった。和の曇りのない俺への想いを感じていたけれど、それどころじゃなかった。香港の事業所の偉い人って・・・内藤「・・・大野・・・どういうことだ」智「それは俺のセリフだ」・・・抱くなら二宮だな・・・まさか、あの時の男のひとりが・・・和を来させなくてよかった。掴みかかって殴りたかった。だけど。智「仕事で来ました。こ
ガシャン!どすん。その大きな音で倒れたのは、俺の会社の上司内藤という男に違いなかった。俺は無傷でなんともなかったから。人生のどこを振り返ってもナカタさんという人には覚えがなかった。和「・・・あの・・・」中田「ここのことは、いいから」縛られていた手を外してくれた。目隠しは自分で取った。和「!!!あ、救急車を!」頭から血を流して倒れている、この嫌な人をそれでも放っておけなくて電話を躊躇うナカタさんから自分の電話をひったくって救急車を呼んだ。部屋にやってきたのは、救急隊
うちの実家と目と鼻の先にある建物。和「ここって、大野さんのおうち?」智「俺の実家は三鷹にあるんだ。ここは社宅扱いにして貰って、はみ出した分は払ってるよ。賃貸だ。どうせすぐに、香港へ行くんだろ?ほれ。ガイドブック」テーブルに置かれた香港のマップ。智「あと、香港の不動産案内な」・・・本当に行く気だ。和「母さんが心配するから連絡を」智「・・・泊まってくれる?」・・・ずるい。さっきまであんなに強引だったのにこんなに可愛くオネダリされるなんて・・・和「帰ります」智「帰さない」携帯
(和)痛みよりも戸惑いが優(まさ)った。・・・俺が二宮だとバレている。だって、名前で呼んでくれた。・・・優しい人・・・変わらないんだね・・・だけど。その優しさは残酷だった。こんな夢のような一夜を過ごせてハジメテを大好きな人にして貰えてまるで恋人同士のように名前まで呼んで貰えて・・・それを一生の宝物にして俺はひとりで生きていく。行為が終わってしまって俺は横を向いた。涙が溢れていたのを見られたくなかった。優しくされればされるほどどうしていいか分からずに頑なになった。
従業員の面談では、興味深い傾向が見られた。殆どの人が既に家族を先に帰国させていて自らも日本への異動を願い出てくれた。だけど中には「この歴史的瞬間に立ち会っていたい」「日本社会から逃げて来た。もちろん、ここでも小さな日本社会があるけれど、日本から距離を置いていたい」いろんな事情があるんだな。・・・和だって、俺から逃げようとしていた。帰国を望む人のリストをまず人事に送りそれから、敢えてここに残りたいと言った人についてその背景を調査し始めた。それは、会社の命令ではない。何故そう
設定(5W1H)when・・・現代where・・東京都内の高校&甲子園who・・・とある高校生達と周りの人々智・高校生・野球部捕手和・高校生・野球部サウスポー投手翔ちゃん・管弦楽部の部長潤くん・応援部→野球部へ雅紀・応援部の部長what・・・部活動と勉強、高校生活why・・・それぞれの葛藤、見えない未来への不安、失敗・挫折、若い煌めき✨などhow・・・起甲子園への切符を手に入れた!承それぞれの壁に打ち当たる→転やるだけやった結それぞれの未来*・゜゚・
金曜日の夜、終業時間すぐの新幹線で帰りたかった。だけど、うまくいかなかった。次々に俺の承認を求めて、部下達がいろんな案件を持ってくる。ようやく解放されて、携帯を確認すると松本さんから留守電が入っていた。品川駅で、和がずっと立って待っているから見かねて連れて帰ります、という内容だった。俺は折り返した。松本📱「あ!智さんだよ。こんばんは」松本さんは和に代わってくれた。和📱「・・・智・・・」智📱「新幹線の時間に間に合った。10時6分に名古屋を出る。11時36分には品川に着く。
依存症の怖さを知ったのは、対象が必ずしも同じであり続けないということだ。例えば、甘いものを食べて疲労が回復するとその時のリリーフrelief(緊張・心配・苦痛などの除去、軽減)を脳が覚えていて糖分を再び取りたがる。体内で化学変化を起こすようなもの、例えば薬とか酒とか。そういう摂取性の依存症はいくらでも考えられた。人との関係ですら、依存の対象になると言う。俺のほうにも、少なからず問題があって和と関係依存になっていることは明らかになっていた。俺はまず、これらの事象を頭で理解し
翔くんからの連絡は、衝撃だった。和が倒れてドクターストップがかかるほどの状態だと言う。医者「不眠と摂食障害、多分解離性の症状も出ています。色の認識が・・・白、黒、グレーだけになっていますので、本人はかなりきついですね。このまま入院をして、投薬とカウンセリングの両方からの治療を提案します」和の病室には、和の両親と翔くんが居た。医者の退室後、翔くんに話があると言われ和の両親に頭を下げて、談話室手前の待合室に行った。櫻井「ニノが帰って来られるように、俺がニノの仕事もデスクも守るよ。いつ
和は分かりやすかった。女子社員が俺に近付くと角がニョキニョキ生えてくる。和「お好きにどうぞ」なんて言いながら、翔くんに甘えに行く。翔くんもコレミヨガシに和を可愛がる。だけど二人は犬のじゃれあいのようだった。だから嫌々ながら、幾分安心もしていた。香港の事業部のアウトラインを掴むため部長「二宮に来て欲しいと香港が言いだした」その申し出は、来るだろうと思っていた。智「俺が行きます」宿泊その他の手配を向こうに任せて単身、香港へ飛んだ。二泊ほどだけど、俺は和が心配で実家に送り
翌日の火曜日には二人で出社した。部長と人事担当の役員が和と面談をして内藤は懲戒解雇の処分が決まった。警察の人も同席して、録音されたと言う。和「警察の人、昨日の人じゃなかった」・・・そうか。和「中田さんのことを弁明したかったのに、それは業務じゃないから、終業後だね・・・」実は、中田のことは・・・和の口から聞きたくなかった。中田が和を想っているのは知っていた。あの、和が海に溺れた十年前の富浦で海に飛び込んだのは俺だけじゃなかった。中田も飛び込んだんだ。俺の方が少しだけ身体能力
あの電話の後、智から連絡がなくて電話をしようか、どうしようか。落ち着かない週末を過ごした。何故か嫌な胸騒ぎもして・・・だけど、仕事を巻いているって話だったから少しも邪魔をしたくなくて一日も早く帰って来て欲しくて連絡するのを我慢するうちに週が明けた。いつも通りの月曜日、いつもと同じ時間に和「いってきます」いつもは見送りに出て来る母さんが朝の珍しい時間に電話が掛かってきてひとりでドアを開けて出た。エレベーター前までの廊下を歩いていたら急に目の前のおうちのドアが開いて中か
松本「大野さんとニノって、一緒に住んでるの?」和「うん」松本「あの、ファーストキスの人だろ?」和「ふふ。・・・うん」松本「あ、その指輪」和「智もしてるよ」松本「・・・幸せそうだな・・・」上海へは、潤くんと一緒に行く案が出た。相葉さんと智は香港を畳む目処がついて一気に片付けてしまうらしい。翔さんが最後まで東京に残ることになる。今の俺のやっている仕事内容を考えるとちょっと不自然な動きだった。和「上海には翔さんが行った方がよくないですか?俺がしんがりを務めます」智「・・・ダ
足の間を生温かいものが伝っていくのを寝転んだまま、左手で目を隠して感じていた。「・・なぁ・・送っていくよ」俺はくるんと背を向けて無言で抗議した。せめて朝まで一緒に居たかった。「・・また、連絡するにはどうしたらいい?」背を向けたまま応えなかった。ため息を吐(つ)いて立ち上がった男がネクタイをシュルシュル結んで「これ、タクシー代。無理すんなよ」そう言って部屋から出て行った。カラダで隠していた赤く染まったシーツを外して簡単に洗う。・・・一線を越えてしまった・・・フクザツな思