両親が死んだ日、正確にいうと、両親が死んだことを告げられたときのことはよく覚えている。僕は専門学校の2年生で、午前中3コマ目の簿記の授業が始まってしばらくしたところだった。簿記の授業だったということをはっきり覚えているわけではない。どういうわけか理由は分からないけれど、ホワイトボードに赤いマーカーで書かれた「定額法」という文字が脳裏に焼き付いているので、おそらくは減価償却についての説明が行われていたのだろう。講師が出席をとり、何らかのプリントを配って授業を始めたところで教室のドアがノックされた。