ブログ記事35件
テマンの言葉に、ヨンとウンスは唖然とする。言葉少ない主の下で長年仕えてきたからなのか・・・それとも、テマン自身の性格からなのか・・・余りにも言葉足らずな伝え方。ヨンは、小さくため息をついた。『テマン・・・それだけでは、何もわからぬ。わからぬどころか誤解を与えてしまう。誰を好いている?お前は、誰を娶りたいと思っているのだ?言葉足らずにも限界があるぞ?』ヨンは呆れた様子でテマンを窘めた。「え?上護軍・・・オイラ・・・直接、スヨンに嫁を貰うって・・・それだけじゃ
テマンとスヨンの事が気になりながら、日々は過ぎていく。ウンスは、ヨンに言われた通り、二人の事を見守ることにした。テマンもスヨンも、今まで通り変わらない日々を過ごそうとしている。しかし、その眼差しの先には、互いの姿を追い求めていた。そんな日々が続いていたとある日・・・テマンはヨンが一人でいる執務室の扉を叩いた。「上護軍・・・」『テマンか・・・?どうした?』ヨンが、執務室の扉を開けるとテマンが俯き立っていた。「上護軍・・・相談したいことが・・・」『なんだ・・・?あ
テマンが部屋を出ていくと、スヨンは、涙をポロポロ流しながらその扉を見つめていた。「スミン・・・テマンさんが迎えにくるまで世話をかける。だが、一月後には、ここから、テマンさんのところへ嫁いでいきなさい。あとの事は、ボヒョンがいる。あれでも、ハン家の跡取りなのだから・・・。良いな?」ハン氏は、涙を流すスヨンの手を握ると優しく声をかけた。「姉様・・・私が、しっかりお父様のお世話をします。だから、安心して、嫁いでください。」「お父様・・・ボヒョン・・・はい・・・」
「スミン・・・お前は、テマンさんと一緒に開京にかえりなさい。そして、上護軍様がお許しになられたら、テマンさんと所帯をもちテマンさんを支えてあげなさい・・・」ハン氏の思いがけない言葉にその場にいた全員が、驚きの表情を浮かべた。「お父様・・・何を言うのです?!私は、お父様の傍にいます。そんな・・・」スヨンは、ハン氏の言葉に言い返す。「スミン・・・私は、お前たちの母を護ることもできずお前たちに寂しい思いをさせ、剰え、あのような卑劣な手に・・・お前たちには、辛い思いをさ
奥の間で、父を待つスヨン。その胸には、言いようのない不安が渦巻いていた。しかし、父に直接話をし、スヨンの決意を伝えるべきだと、自らを奮い起こし、その時を待っていた。「待たせたね。旦那様を連れてきたからね。とにかく、この家の為、スミン、お前は、パク・チョングァン様に御奉公するんだよ。開京一、二を争う、高貴なお方にお仕えできるんだから、有難く思わなくちゃ。ねぇ、旦那様。旦那様からも、スミンに言ってあげてください。こんな良いお話、お断りするなんて、親不孝にも程がある
テマンとスヨンの間で、どのような話になっていたのか、それを、ヨンとウンスは知る術もなく・・・ウンスは、お互いに想い合っているもの同士がどうして結ばれないのか。そのことに、胸を痛めていた。ヨンは、ウンスの気持ちを知りつつも今は、まだ、動くべきではないと、静かに見守るべきだと心に決めていた。「ヨン・・・どうして・・・?これが、高麗の婚姻なのかな・・・?想いあっていても結ばれることができない・・・」『ウンス。今は、静かに見守るしかないでしょう。二人で話合った結果なので
翌日。遅い朝餉を食しているヨンとウンスのもとへテマンとスヨンが揃って顔をだした。「テマン。それに、スヨン。二人揃って如何したの?」ウンスは、何事もなかったかのように二人の声をかけた。ヨンは、黙って二人の様子を見ている。「昨日の夜はお騒がせしてすみませんでした。」テマンが口を開き、二人そろって頭を下げる。『それで、話はしたのか?』ヨンは、穏やかな声で二人に話しかける。「はい。ちゃんと話しました。」テマンがスヨンの顔をチラリとみて答える。『そうか・・・それで、俺
陽だまりの人【テマンside】いつからだったのかな。そもそも、いつからそこに居たのか、覚えてないくらい、いつも居たからな……大護軍に拾われてからずっと、おれは大護軍と一緒に居た。大護軍の行く所なら、どこへでも着いて行った。だから、一緒に典医寺に行けば、だいたいいつも居たんだ……トギは。トギは口がきけないけど、耳は聞こえてる。だからかな、他の女達みたいに、しつこくないし、やかましくもない。話は通じるし、余計な気を遣わなくていい。むんむんしてないし、おしろい臭くもない。邪険な目でお
陽だまりの人【ヨン・ウンスside】「大護軍、医仙。おれ、トギに振られました」王宮へ出仕する折。俺とイムジャが馬車に乗り込んだところへ、御者を務めるテマンが、俯き気味に報告してきた。「え、振られた??どういう事、テマナ」戸口から身を乗り出してイムジャが問うのへ、テマンは幾分すっきりした顔を向け、「こないだ相談した…あれです。やっぱり、嫌だって言われました。その…気持ちだけでいいって」へへへ、と眉を下げるテマンに、俺とイムジャは思わず顔を見合わせた。「そうだったの……でも、これからも
陽だまりの人【トギside・後編】——家族、か。私もテマンも身寄りは無く、長いことずっと1人で生きてきた。それでも、特に辛いとか困った事は無かった。テマンには大護軍が、私にはチャン先生がいたし。淋しいとか、そんな事を思ってる暇も無かったし。家族なんて持ったら、きっと面倒が増える。子どもなんて持ったら手がかかる。やりたい事が出来なくなるじゃないか。私は何に縛られる事なく、自由でいたいの。だから1人で生きていく。全て己れで責任を持つって……そう決めてたのに。なのに、今私はテマ
陽だまりの人【トギside・前編】いつからだったんだろう……全然全っっっく男として見た事なんか無かったのに。まぁ、それはテマンも同じだろうから、お互い様か。自分でも驚いてる。私は生涯、色恋なんか縁も興味も無い。その自信もあったのに。……だけど、たった一度。1人だけ、想いを寄せた人は、いた。いわゆる初恋ってやつ。それは認める。チャン先生。片想いだったけど、あの人の側で学び研鑽した日々は、とても幸せだった。だけど、府院君の手下の…あいつらに、先生と典医寺の仲間達が殺されて