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話を一通り聞いた後、「明日の学校だが、休めないか?」珍しくアラタさんが学校をサボれないかと言ってきた。あの学業最優先、あ、今は葉山さん最優先か…。そのアラタさんが休めと言う。考えれることはただひとつ、葉山さんに関係がある。「葉山さん絡みですか?」間違いないと思うけど、確認だ。「あぁ、そうだ…。休めないなら、葉山が出た後少し間を空けて家を出てくれ」「それはどういう意味ですか」休めないなら一緒に学校に向かえと言われるならわかる…。「もし手紙の奴が側にいるなら、お前が一緒だと姿を現さ
俺たちは森田を駅に降ろし、昼でも食べるかと店を探した。そして、そこがあの場所の近くだということに気付いた。「ここにするか」章三がピンポイントでその店をチョイス。すかさず「ごめん、赤池くん…ぼく、早くこの街を抜けたいんだ…」「どうした、葉山…具合が悪いのか?」よく見れば少し顔色が悪い。三洲はさすがによく見ている…タクミの少しの変化をこんなにも早く察知するとは。「ううん、大丈夫…ただ…」"ガッシャーン!"突然落ちた雷「これは近いな…」雨もまだ落ちてないのに、雷が先に来た。
野沢からの連絡を待っているが、返事はまだだ。『ポトッ』ポストの方で音がした。まさか、また脅迫状?!慌てて中身を見に行くと午後からの授業だったのか葉山がそれを手にしていた。「…葉山、それ…」もしかして、アレか?なら葉山が開けるより先に奪わないと。「それ、俺宛か?」無記名かどうかを先に確認だ。「…えっと…っえ?」なんだかよくわからないが『何だろう…』と言う顔をしている。「差出人は?」再度確認だ。「…はい。三洲くん」俺宛?なんだ?資格の合否はPCで見れる。だから、その類いは送られて
あれから、葉山さんは沢山のコンクールに出てあちこちで賞をかっさらった。そしてその度にコンサートの回数が増えていった。「葉山さん、ちゃんと休めてるんすかね…」週末になると慰問とか、自治会とか、町のイベントとかに呼ばれて演奏してる。葉山さんは『こんなぼくの演奏を聴いてくれるだけでも有難いから』そういって嬉しそうに出掛けていく。だけど、あんなに細くて華奢な葉山さんの体力がオレは心配なんだ。「最近は顔色もいい。多分精神的に安定してるからストレスを感じずに演奏出来てるんだろう。その相乗効
会場に着くと、井上さんがいた。「託生くんが二人を呼んだって言ってたから、席を横にしてもらったんだ」なるほど、最初から決まってた席じゃないんだ。おかしいと思ったんだよな…。普通ならVIP席にいるはずの人がこんな後ろにいるなんて。「託生くん、二人が来てくれるって凄く喜んでたよ。ご両親なんて一度も来たことないのにね。あの親は昔から託生くんのこと低く見てるんだ、許せない」井上さんは脅迫状のことだって手紙のことだって知らないのに、葉山さんの両親のこと知ってるんだ…。ちょっと不思議に思った。それを
結局一時間くらい演奏してくれた。その時に感じたこと…完全復活してる。自分では納得出来てないんだ…そう言っていたけど、オレには何処がダメなのか全くわからない。ファン1号とか言っておきながら、その部分がわからない。「葉山さん、何処がダメなんすか?オレにはプロの演奏にしか聞こえませんでしたけど…むしろオレ的には、井上さんより響きましたけど?」ホントにそう思った。井上さんは確かにプロだし上手い。でも、葉山さんの演奏は温かいんだよな…。この11月の季節すら花が咲くんじゃないかって思える…そんな演
摂食障害、睡眠障害、後は言葉の壁。「葉山、海外コンクールの話が出てるんだって?」まだ誰も知らないと思っていたのか、俺を驚いた顔で見つめる。「なんで三洲くん知ってるの?」驚きをそのまま口にする。「ああ、井上さんからパスポートについて聞かれたんだ。だから再発行を薦めた」誤魔化すことなど必要ない。井上と繋がっていると知っている方が、きっとこれから都合が良くなる。「…再発行…三洲くんのアドバイスだったんだ。…ごめんね、ぼくが取りに行くって言えば佐智さんも相談なんかしに行かなかったよね」俺
アラタさんをベッドにそっと下ろす。「アラタさん、オレも横になればいいっすか?」小さく頷く。今日はホントに素直だ。「じゃ、どうぞ」一緒に並んで横になり、オレはアラタさんに両手を広げて『おいで』をした。そこに、少しずつ距離を縮めて収まりにくるアラタさん。行動すら、今日は小動物みたいだ。やっと胸に辿り着いたアラタさんをギュッと抱き締める。「アラタさん…大好き」久しぶりに口にした言葉。祠堂の時は顔を見るたび言っていた。何処にいようと、誰が見ていようと関係なかった。自分の気持ちを出
葉山さんの演奏は拍手喝采で終わった。コンクールなのにスタンディングオベーション…。「凄い!託生くん、凄いよ!こんなことってないんだよ!みんなの心を動かしたんだ!託生くんの《愛の挨拶》がみんなに愛を伝えたんだ!僕も聖矢さんに会いたくなっちゃった…。託生くんが義一くんに会えないのにそんなこと言っちゃダメかな…」愛の挨拶が、心に愛を灯したと井上さんが言う。確かにオレも途中からアラタさんの手を握っていた。それに応えるようにアラタさんも握り返してくれた。それって、音の影響なんだ…。葉山さんの
帰り道…「赤池は明日、どうする?無理に付き合わなくていいぞ」三洲は僕がいなくても大丈夫だと言う。多分僕の授業を気にしてるんだろう。だが、明日は月詠にどう出ればいいのか結果が出るんだ。勉強なんか手につかないさ。「いや、明日も付き合うよ。なんの為の同盟だ」そう、俺たちはあの10ヶ条の同盟を組んだんだ。一人に任せることなんかしたくない。「それなら、今日は泊まっていくか?」朝からバタバタするくらいなら泊まれよと言う。そうだな…焦ると禄なことがないのはギイの浅はかさで勉強した。「よろし
「葉山と同居しようと思う‥」そう、赤池に伝えた。「お前、真行寺はどうするんだ?」「三人でと言うことで納得した」「お前はそれでいいのか?」「俺はいんだ‥ただ真行寺には悪いと思ってる」「僕が家を出て、葉山と住んでも構わないぞ」赤池が提案してくる。「いや、親父さんが困るだろ‥」「それこそ、今更だ。祠堂で3年寮にいたんだ。それにその間に親父だって成長したさ」「だが、勉学と葉山の面倒と家事となると追い込まれるぞ‥」それは赤池なら何とかこなせるかも知れないが、負担は大きいだろう‥が赤池も
真行寺にキスをされた俺を見ながら全員が大笑いをする。「真行寺、後で覚えておけよ!」どれだけ凄んでも、全く暖簾に腕押し。「はい、はぁい!おぼえておきまぁす!アラタさんとちゅーしたこと、わっすれま、せーん!」リズムにのりながら手を挙げて、宣誓する。二日酔いじゃないのに頭が痛いぞ、真行寺…。「バカな真行寺は置いておいていいから。それより葉山、ドイツ語は難しいか?」「難しいのはどれも同じだよ…。ただ、ぼく目から入れる情報が苦手みたいで…ほら古典の宿題してたの覚えてる?あれだってスッゴク時
最終審査の日、「じゃ、ぼくは向こうで待ってる!気をつけて来てね!」まるで子供の発表会を見に来る親に言うように葉山さんはワクワク顔で手を振って出掛けていった。「あれだな、子供時代のやり直し…。これはいい機会だったかもしれない」少し聞いた、葉山さんの両親との溝。そんなことは全く見せないでオレたちと過ごしてきた5年間。オレも離婚した親がいるけど、どっちもオレのことは可愛がってはくれた。それは金銭的な面も。ただ、二人が顔を会わせると喧嘩が絶えない…そういう親だった。「お前もやり直せ