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「やめて来たんじゃないのかよ!?ばっかじゃないの!」当然のごとく、二宮は開口一番、そう声を荒げた。キッチンテーブルで向き合って座る二人に、緊張感が走る。相葉は伏せていた目を上げ、じっと二宮を見つめた。櫻井の家へと出掛けた相葉を、二宮はジリジリとした思いで待っていた。しかし、やっと無事に帰って来たと思ったら、相葉は仕事を続けると言う。一瞬、耳を疑った。出掛ける前は、確かに辞める気だったはず。あんな目に、あんな酷い目にあったのに……
腕に囲えば、もうそれで。本能に、二人は打ち負かされる。相葉は素直に自分の背中を後ろに預けた。尻に当たる固いモノ。それだけで、視界が揺れる。くるりをその身体を反転させ、同じ高さで櫻井が視線を合わせる。じっと見つめられ、さらに息が上がってしまう。漆黒の瞳が静かに溶け出し、わずかに欲望の影が浮かぶ。「まさき……」愛おしさから、漏れた思いを受け止める。しっとりと、深い口づけを交わしあう。濡れた舌先が絡み合い、これはもう、ただ欲しいという気持ちになるだ
***この地で起業すると決めて、その準備に櫻井は一人忙しい。一人、書斎で資料やら、書類やらと格闘中だ。ノウハウや人脈と秀でたアイディアがあれば、今じゃどこででも仕事は始められる。海外に行っていた時に出来た太いパイプもある。とは言っても、一人で出来ることには限界があるのも確かだ。ふと、頭に浮かぶ顔。でも、今回ばかりは、昔から右腕として頼りにしていた松本に助力を乞えない。家からも、その事業からも離れてしまった、今や、何の後ろ盾もない自分。常に連絡を取り合っていて
口移しの吐息が混じり合い、互いの思いの強さを教える。粘膜の奏でる水音や、絡み合う舌に荒い息衝き。相手に触れる手が、肌が、否応も無く熱を持つ。始めは積極的だった相葉の身体が、ゆっくりとその場に崩れ落ちる。しな垂れかかる重み。無意識に擦り付けてくる個所は、すでにカタチを変えている。受け止める櫻井は、もう夢見心地だ。首筋に唇を這わせ、夜着を肩から落とすと、そこにはあの蠱惑的が痣が……。そっと舌先でなぞれば、相葉はそらした喉奥を鳴らして小さく身震い
「ごめんなさい」なんて、聞きたい言葉はそれじゃない。櫻井は、自分が何か途轍もなく無茶な事を言ったのかと戸惑う。「ごめんなさいって、なに?何が?」相葉の両肩を優しく掴み、そっと顔を覗き込む。そこにある深い憂いが、櫻井の胸を抉った。「俺達、同じ気持ちじゃねえの?」正直になろうと思った。相葉がいる幸せを、相葉がいない寂しさの意味を、今度は間違えたりはしていない。重ねた唇の熱で、二人、同じ気持ちだと思えたのに……。しかし、相葉は力なく首を振る。「む、無理な