ブログ記事293件
「あら、じゃあ、調度いいからお願い事できるかしら。」急なお休みをもらうからと、翔子さんに直接会いに行ったときだった。2泊できるように、休館日の翌日を休みにしたかったのだ。「お願い事、ですか。」「ええ。明日のとは別に。ついでにちょこっとでいいの。」そう言って、翔子さんはあるパンフレットを僕に手渡した。大阪にある美術館の特設展のものだった。「その中にある絵なんだけど。」僕はパンフレットをめくる。一枚の絵が目に飛び込んできた。「うふふ。」翔子さんが嬉しそうな笑い声を立てる。パン
「今?」「うん。」「・・・ごめん。もうだいぶ待たせてるから。」「・・・そっか。」「大事な用?」「ううん。そんなことない。今度連絡する。」「この間もなにか言いかけたじゃん。」「へへ。ただ懐かしいだけ。」長いこと大好きで、短い間でも付き合っていた人のことだから、何かをごまかしているのくらい分かった。でも、さっき片思いの頃の気持ちを感じてから、僕は潤のところに早く行きたくて仕方なかった。「そっか。じゃあ、俺行くわ。」「あ・・・うん。ふふ。飲みすぎないでね。」「ふふ。大丈夫。今夜
ここ数年の僕の毎日は規則正しい。でも、同じようでいてぜんぜん違う日々。それは、割と誰でも同じなのかもしれないけど、僕は今の職につきたいと思った時、この仕事はちょっとだけ特別だと思っていた。他の仕事をしたことがあるわけじゃない。僕は、小学校3年生の頃から描き続けて来た絵を生業にしたため、40歳になってこの仕事が2つ目なのだ。バイトもしたことがない。したいとも思わなかった。だからって人生経験が足りないとか、そんなことを思ったこともない。ただ、大好きな一つのことに集中できたラッキーな人