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★★★1-7いつもより一時間ほど早い帰宅だ。まっすぐ帰る気持ちにはなれない。キャンディはポニーの丘に寄り道をして久しぶりに木登りでもしようかと考えた。大人になってからその機会はめっきり減っていた。常に時間に追われる二足のわらじを履いた生活は、些細な気分転換の時間さえ簡単には許してくれない。「わぁ・・、いつの間にかこんなにきんぽうげと白つめ草が・・」もうすぐ一面に白い絨毯を敷いたような、一年で一番美しい季節を迎える。頬をかすめる風はまだ冷たいものの、湿った心が少しだけ軽くなった
★★★6-2「本当に結婚したのね。キャンディおめでとう!!」二人きりになったアニーは、緊張が解けたようにいつものやわらかな笑顔を向けた。四階にあるコーンウェル家専用の応接間での事だ。気の置けない女同士の会話がとめどなく続く中、不意にアニーがキャンディの手を見て気が付いた。「結婚指輪は?」「あるわよ。でも役者とイギリス男子は指輪がNGなんですって。テリィがしないから私もしないの」あっけらかんとした口調でキャンディは答える。「テリィはしていたように見えたけど?」さす
これは「11年目のSONNET・エピローグ」の中の一文をピックアップしたスピンオフです。ネタバレには絡まないお話です。おめでとう―11年目のSONNET―★★★アメリカからの帰りの便、キャンディは船酔いが酷かった。赤い愛車をニューヨークの家に置いてきたテリィが、イギリス本土へ足を踏み入れた瞬間、馬車で向かった先は車の展示場だ。「これにしようと決めていたんだ」今日もテリィの決断は早かった。明らかに以前とは車種が違うことにキャンディは驚いた。箱型
★★★8-22暖炉の薪がパチパチと大きな炎を上げ始めた頃だった。「・・降り始めたのか・・」窓ガラスの向こうがうっすらと白くなっていることに気付いたテリィは、ちらちらと光りながら落ちてくる雪に誘われテラスへ出た。雲の割れ間から令月が覗く雪月夜・・。幻想的な光景だった。「テリィ・・?」食器を洗っていたキャンディの耳に、柔らかなハーモニカの音色が届いた。雪のカーテンで視界がぼやけ、ガラス戸の外は何も見えない。テラスへ近寄って行くと、ついたばかりの足跡が三つ四つ。冬のあの日、ポニー
★★★3-8劇は登場人物もセリフも必要最低限にカットされ、テンポよく進んでいった。子供からお年寄りまで楽しめる大衆向けのアレンジは、テリィが披露している演劇とはおそらく全く異なっているのだろう。第一線で活躍しているシェークスピアアクターの目にはどのように映っているのか。(喜劇に見えたりして・・)そんなことを思いながら、キャンディは隣にいるテリィを時折見たが「・・・・」度々目を閉じてうつむくテリィに、キャンディは何かを感じていた。物語がクライマックスの霊廟のシーンに入った時だった。
※このお話は、本編エピローグの冒頭の一文をピックアップした物語です。本編を未読でも読めるようになっています。前回のスピンオフ業火の劇場の1ヶ月後の出来事です。★登場人物・・・アルフレッドテリィのアメリカ時代からの旧友(劇団員)。ややぽっちゃり体型。どんな人物だったか知りたい方は、5章アルフレッドの告白をご覧ください。アルフレッドの独白11年目のSONNETスピンオフ★★★焦げ臭さの残る黒い地面とは対称的に、透き通るエイボン川は淀みなく、抜ける
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★★★8-18黄金のオーラを身にまとい、本物のエレノア・ベーカーが目の前に座っている。テリィはその大女優を『母さん』と呼び、キャンディは『ママ』と呼んでいる。分かり過ぎる状況なのに、アーチーにはこの状況がてんで理解できない。(こ、これは、・・いっ、いったい、・・どういうことだ――!?)アーチーはまばゆいばかりの美しさを放つその人に恐る恐る目を向け、隣にいるキザな奴と見比べた。何故今まで気づかなかったのか。二人が親子であることは一目瞭然だ。(そのままの顔じゃないかっ、いったい今まで、
★★★8-16「キャンディ・・お待たせ・・」打ち合わせ通りの席で映画を観ていたキャンディに声を掛ける。「・・上手くいったみたいね。よかった・・」小声で話すキャンディの横の席にテリィは腰を下ろした。午前の早い時間の映画館。上映作品は西部劇のようだ。客など殆ど入っていない。「私、西部劇って初めて。お芝居とはまた違って、すごく新鮮・・」テリィも映画を観ようとするものの、もはや話の筋に付いていけない。キャンディの肩に頭を乗せ、うとうとしかけた時、画面がラブシーンに切り替わった。反射的に
★★★8-4「愛の言葉をねだられることも、俺を試すような会話も幾度となく繰り返されたが、俺は応えた。言葉やキスでスザナの気持ちが落ち着くなら、こんなたやすいことはな・・・――キャンディ・・?」・・・ダーリン、まだお休みにならないの・・?マイアミのホテルで聞いたスザナの声がふと蘇り、キャンディは殆ど無意識に、ギュッと目を閉じ、固く結んだ手を胸にあてていた。覚悟していたとはいえ、テリィの口から他の女性との生活が・・――スザナとの生活が語られると、まるで一枚ずつ写真を見せられているよう
11年目のSONNETスピンオフ空白の時最終話★★★劇場に、キャンディが来ていたかどうかは分からない。分からなくて良かったのかもしれないとテリュースは思った。その方が、希望がつながるから――結局、その日は病院に泊まった。ホテルには帰らないで、とスザナに懇願されたからだ。――キャンディと逢い引きするとでも思っているのか。(・・・信用されてないんだろうな・・)イライザをキャンディと勘違いしたことは棚に上げ、テリュースの胸中はいささか複雑だった。今
目に映ってたけど、見てなかったよこれは、我らがT・Gが5月祭の時に放った最強フレーズです。バッチリ見ているのに、しらを切っていますね。しかし、この目に映ってたけど見てなかった現象は、よくあることです。例えばアーチーの誕生日いつなのか、ご存じ?知らない?誕生月は知ってる?知らない?私も知らない。興味もございません。でも、本当はみなさん知っているのです。だって、ほらアニーが言ってます。もうすぐア
とにかく「あのひとが誰か」を知りたい人は、このページをとばしこちら★をお読みください。ココでは、2003年に復刻した旧小説版と、『書き直した』と原作者自ら語るファイナルとの違いを検証します。両方に登場する「手紙」の内容を比較し、相違点を浮き彫りにしたいと思います。旧小説の登場順位で紹介します。※時系列とは限りません。エレノアへの手紙旧小説エレノアからハムレットの招待状が送られてきますが、キャンディはそれを送り返しました。キャンディの返事「テリィの
💛前回までのあらすじイギリスの劇団からハムレットの代役の依頼を受けたテリィは、急遽渡英することが決まった。紆余曲折の上やっとキャンディと再会したテリィは、イギリスへ一緒に来て欲しいと迫る。故郷の人を残してはいけないと一度は断ったキャンディだったが、アルバートの手紙に後押しされ決意する。スザナの墓前で過去について語り出したテリィ。スザナに対して特別な感情はなく、自立を支援していたと説明したが、多くの事は今は話したくないと、マーロウ家での生活や婚約の真相については明言を避けた。旅立ちの朝、港にテリ
★★★7-14人もまばらなピッツバーグ行の夜行列車。出発時間が遅いためか、乗客達は席に着くなり次々と眠りについていく。「やっぱり君が窓側に座ってくれ。どうも落ち着かない」キャンディはなぜこの期に及んでテリィがそんなことを言うのか見当がついた。「あなたって意外と単純なのね。さっきの若い夫婦を見てそう思ったんでしょ?」キャンディがにたりと笑うとテリィはぐっと口をつぐんだので、図星だったようだ。(・・この列車なら大丈夫そうね・・熟年の男性ばっかりだわ)「君も寝ていいよ。俺はこれを読みた
★★★7-10閑散としたプラットホームのベンチに座り、乗り換え列車を待っていた時の事だ。「印象派の巨匠もびっくりだな。マーチン先生にこんな才能があるとは」マーチン先生が昔描いたというアルバートの似顔絵に、テリィはしきりに感心していた。「傑作でしょ?これも宝石箱に収めようと思って」キャンディはマーチン先生から餞別に貰った知恵の輪をポケットから取り出した。「・・宝石箱に何を入れても構わないとは言ったけど、このままだと単なるガラクタ入れになりそうだな。・・しかし、なんだって君たちはアルバー
★★★6-10「キャンディ、いつまでのんびり食べているの!?もう切り上げないと支度が間に合わないわ・・!」ノミの心臓のアニーはしびれを切らし、キャンディの口に食べかけのオレンジを押し込んだ。「たくさん食べておかないと倒れちゃうわ。どうせ宴会中はろくに食べられないもの―」口をもごもごと動かしながら、アニーに引っ張られるようにダイニングルームから出て来た時「ハニー?食べ物を口に入れながら歩いてはいけないよ」クックと笑う声がした。「――え・・?」階段から下りてきたテリィ
💛前回までのあらすじ公爵家から結婚を許されたキャンディだったが、公爵と話をしている内に、テリィとスザナの婚約は偽装ではないことが分かった。両親から反対され結婚を断念したと知り、キャンディの心はざわついた。追い打ちをかけるように、劇団員のジャスティンからテリィとスザナは結婚式を挙げたと聞かされた。何も語ろうとしないテリィの態度や言動から、二人は深い仲だったのだと認識したキャンディは、嫉妬にかられながらも胸の奥にしまい込んだ。後に挙式はしていないと分かったが、直前にキャンセルしたという情報を、ジ
キャンディの恋心を中心に、考察半分・妄想半分でお届けしたいと思います病院での密談ファイナルのキャンディは、スザナと次のような約束をしていました。「それに、スザナ・マーロウとの約束もあります。もう(テリィに)会わないと約束しました」下巻273・エレノアへの手紙から抜粋この約束は漫画や旧小説には無く、新しく足されたエピです。キャンディがNYを離れる前から、既に漫画とファイナルでは違います。「NYを離れる前から」と書きましたが、実はファイナルには詳しい事は何
★★★2-20猛スピードで家に戻る車内でキャンディは気が付いた。「・・ねえ、このガタガタ聞こえる音は何・・?」「ああ・・、鉢だよ。後ろの座席にあるんだ。倒れてないかな」「鉢・・?」家に着いた途端、テリィは階段を駆け上がった。部屋の机の上には今朝書いたキャンディ宛の手紙と共に、小さな小包が揃えるように置かれている。「手紙はもう用済みだな・・」テリィは手紙を破くと、小包を手に取った。後部座席を覗いていたキャンディは、鉢の苗を見て目をゴシゴシとこすった。「これ・・、スウィート・キャ
★★★2-17「―・・キャンディ、俺・・イギリスへ行くんだ」「・・え、また?この前行ったばかりよね?随分頻繁にあるのね」「・・いや、公演じゃなくて、――いや、公演だな。・・実は昨日でストラスフォード劇団を退団したんだ。今度イギリスの劇団で芝居をすることになった」突然の告白に、キャンディは一気に混乱する。「・・・イギリスに、帰るって・・言っているの・・?そうなの!?」頷くようなテリィの動作に、キャンディはショックを隠し切れない。「どうして!?どうして今になって・・。こんなにアメリカで
★★★4-4「ふぁあー・・」これ以上ないほど両手を広げ、思わず声が漏れるほどの大あくび。のけぞる様にカウチに投げ出した頭は、天を向いたまましばらく浮上してこない。キャンディはスーツの上着をハンガーに掛けながら、そんなテリィの様子を心配そうに覗いた。ハードな稽古の上に初日の緊張感もあっただろうが、それに追い打ちをかけるようなお偉方との会食。昨夜の睡眠時間が全く足りていないこともキャンディは知っている。「明日もスリーピースで行くの・・?」「・・いや、幹部への挨拶は今日で済んだから・・
【2024年3月4日加筆しました】テリィという人物は、いがらし先生の絵と共に性格も漫画のイメージで完成されていると思いますしかし、漫画版と小説版では、テリィを描いた人物が違うので、微妙に違います。では実際に、どんな風に違うのか、比較したいと思います。まずは漫画のテリィ破壊系テリィビリッガシャーンバッ!暴力系テリィビシッ!!ピシ!ピシ―ッ!!並べると、すごく荒っぽい奴に見えますね「(連載当時)乱暴者で情緒不安定なテリィが嫌
キャンディ雑談ロミオとジュリエットキャンディの作中に出てくる『ジュリエット』の衣装は、1968年のレナード&オリビアが演じた映画版と似ています。いがらし先生は参考になさったのかな?この衣装、やたら重いと何かに書いてありました。(10キロだったか?)これ様々なロミオとジュリエットの映画が作られる中で、レナードバージョンが一番すきです。観ていない方は是非スザナの容姿も相手役のオリビア・ハッセイに似ている気がします。「君は薔薇より美しい」の布施明の元妻ですね。
★★★1-4思い出ごと封印したあの日からちょうど六年が経つ。引き出しの鍵はずっと閉められたままだ。あれ以来、一切の邪念を捨てるようにテリィとスザナの幸せを祈ってきた。ブロードウェーのスター、テリュース・グレアム。もう手の届かない存在。それが今のテリィ。――ぼくは何も変わっていない突然手紙の文字が頭に浮かんだ。「・・あ、そうか。手紙が来たんだったわ。昨日――」あれは夢だったかと一瞬思ったが、確かに封を切った覚えがある。朝起きた時、机の上には確かに白い封筒が置かれていた。「・・
★★★2―22マンハッタン区。路地裏の隠れ家的なレストラン。テリィの馴染みの店のようだ。窓際のテーブルに向かい合って座った時、キャンディは気が付いた。「あら、変装してなかったのね。もういいの?」「変装なんかする気は無いって言っただろ。事実を撮られたところで痛くもかゆくもないね」今日一日散々変装していた人のセリフかと、キャンディは半笑い。「それに帽子やサングラスをしたままで食事なんかできるか?マナーに反する」テリィはすました顔で答えた。「マナー?」学院の礼拝堂の机を土足で踏ん
💛前回までのあらすじ披露宴の為、シカゴにやってきた二人。そこでキャンディはテリィにある疑問を抱いた。スザナと婚約し結婚秒読み状態にあったテリィは、父親の承諾など無くても結婚できたのに、何故突然やめたのか。時同じくして開かれたアードレー一族の集まる夕食会で、スザナとの婚約記事は全てデマだとテリィは言ってのけた。それはアルバートが描いた台本だったが、アルバートは事実に基づくと言ってキャンディを諭した。テリィに何も訊けず悩むキャンディ。一方テリィも、事実を話したらキャンディを傷つけると躊躇していた。
6章⑭「すっぽかした授賞式」のスピンオフです。本編を未読でも読める話になっていますが、6章まで読了されていない方には壮大なネタバレになりますのでご注意ください。★★★「残念だわ、クリスマスのミサが終ったらパーティをするのに。カートライトさんもジミィも来るのよ?」キャンディは不服そうに口を尖らせながら、アードレー家のエンブレムが誇らしげについた黒塗りの車のハッチバックをあけた。「うわっ!ありがとう、アルバー・・大おじさま!!」大量のプレゼントの箱が顔を出すとキャンディの表情は一変し
キャンディの「今」をろくに調べもせずに出したようなテリィの手紙の文面。短いながらもテリィらしさ全開の文面は、突っ込みどころ満載です。再現度100%の全文に登場してもらいましょう。キャンディ変わりはないか?……あれから一年たった。一年たったら君に連絡しようと心に決めていたが、迷いながら、さらに半年がすぎてしまった。思い切って投函する。――ぼくは何も変わっていない。この手紙が届くかどうかわからないが、どうしてもそれだけは伝えておきたかった。T・G書いたのはいつ?
★★★4-8「誰だ?朝っぱらから、しかも劇場の正面で」劇場の警備担当者は呆れている。「見ない顔ね。いいわね~、若い人は情熱的で―」駐車場の掃除をしていたおばさんは羨ましそうに息をつく。「ちょっ、ちょっと、、今のテリュースさんじゃなかったですか??恋人、ですかね?!」玄関前を塞がれ、中に入れなかった研修生のオリビアが、戸惑いながら隣のミセス・ターナーに尋ねる。「―さぁ?私に聞いても知らんがね。本人に聞いておくれ」ミセス・ターナーはどこか投げやりだ。「テリュースじゃないか。・・へえ