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陽が昇る前に出勤していく翔を見送り布団の中に潜り込む年末年始、アナウンサーはかなり忙しいらしく目の下にくまを作りながら、タクシーで出掛けて行く正月休みに入った俺はと言えば、かなりの暇人休みに入って直ぐに大掃除を済ませてしまいやる事がないので、アルバイトに行く(無給だけど)陽が昇る頃に起きだし洗濯を済ませて家を出た雲一つない青い空街路樹にしがみ付いてる枯れた葉がカサコソ音を立てる北風が強くて思わず肩を竦めた「さむっ!」陽が昇ってこの寒さって事は彼奴が出
師匠が大ちゃんに3組分の値段を提示したその金額をそのままカードで支払ってくれたつまり、一体いくらなのか分からない不安気な顔をしてると「君の師匠は良心的だね(笑)」大ちゃんがにっこり笑って僕の肩を叩いた「俺だってな、ちゃんと弁えてるぞ」何も言ってないのに今度は師匠が言い訳めいた顔をする「師匠が付けてくれた値が知りたかっただけで文句は言ってないです」「今回は正当な値をつけさせて頂きました」「ええ、間違いなく正当な値だと思います」「ご祝儀相場じゃない
翔さんと師匠は商店街の活性化について話し始めて僕と健太君は話題に置いてきぼり状態正直、難しい話は僕では手に負えない「難しい話は二人に任せておけばいいわよ」お祖母ちゃんが僕の方を向いて気にしなくて良いのよって顔をした「聞きたかった事があるんですが」「何?」「Ladybirdは元からジュエリーショップなんですか?」「ジュエリーショップに代わったのは息子からよそれまでは町の時計屋さん携帯が普及し始めてから腕時計をつける人が少なくなって経営も成
絵の事は気になるけど今はjewelryを作ることが最優先翔さんのお母さんとお祖母さんから頂いた注文心を込めて作らせて頂かなきゃ・・・「智、工房に行って良いぞ」師匠がにっこり笑う「良いんですか?」「工房でしか出来ないことがあるから暫くは工房での作業が中心だな」「はい!」午前中お店に出て昼過ぎに交代してそれから工房だとどうしても作業に遅れが出るかもって心配だったから「そうだ、暫くマダムは朝から店に出るから健太のお迎えだけ智に頼むことに
健太君にお年玉を渡すと満面の笑みでお礼を言うお年玉を貯めて買いたいものが有るらしい「おにいちゃん、これおみやげなの」ご当地ゆるキャラのキーホルダーを渡してくれる「もしかして、お年玉で買ってくれた?」「うん、とくべつなおみやげだから」「ありがとう・・・お兄ちゃん何処にも出かけられなくて今度、どこかに行ったらお土産買ってくるね」「おにいちゃんにもらったおみやげいっぱいあるからだいじょうぶだよ」一生懸命選んでくれたんだろうなって思うそれが嬉
工房で作業をしてるとドアをノックする音「はい、どうぞ」ゆっくりドアを開けて顔を覗かせたのは健太君「さとしおにいちゃん、ゆうはんができたよ」健太君は工房に入れないから廊下からドアノブを持ったまま顔だけを工房の中に「もうそんな時間?」「うん、そうだよ今日はねぇ、マダム特製カレーだよ」「お野菜がたくさん入ったカレーだね僕の大好物」「かつも付いてるよ」「カツカレーって事?」「うん、きょうはさとしおにいちゃんのだいじなひだからだよ
母と祖母を実家に送りその足で部屋に戻った急遽、実家に泊まることになった上明日は大事なプレゼン何時に行けば良いのかは後で聞くとして仕事道具(ノートパソコン)と着替えを鞄に突っ込んだ毎日来る律儀な編集君に予定変更を伝えないといけない根掘り葉掘り聞かれるのも煩わしいから個人の携帯ではなく出版社の方に連絡を入れるが珍しく不在ちゃんと仕事はしてるみたいだ(笑)用件を伝えて電話を切りそのまま出掛けようと玄関に向かうタイミングを見計らったように玄関のチャイムが鳴る
夕食の片づけは健太君と二人でするマダムは肇おじさんの時計を取りに行った「おにいちゃん、もってきたよ」食器を運ぶのが健太君で洗うのが僕「ありがとう」小さい手で運び終わった健太君ふ~って息を吐いて額の汗を拭う仕草を見せる(汗は掻いていないけど(笑))「てーぶるふいてくる!」濡れ布巾を手にダイニングテーブルに向かって走って行くかなり上機嫌なのかアニメの歌を口遊んでテーブルを拭いていく「隅っこの方も拭いてね」歌いながら何度も頷いて丁寧に拭い
丸ちゃん、すごく勉強したんだバーテンダーの衣装も様になってる自分ではまだ似合わないって言うけど僕は凄く似合ってると思った片やカクテルの事に疎い僕丸ちゃんの勉強の成果を分かち合えない・・・『キール』ってカクテルを出して貰ったけどカクテルにも意味が有るの?全く分からない・・・翔さんは知ってるみたいだけど教えてくれないグラスのキールを呑みながらカクテルのメニューを見て話してる二人翔さんは詳しそうだから丸ちゃんの勉強の成果はお披露目できてるけど僕だけ置いてけぼ
街が起きだす前の静かな時間タクシーに乗って仕事に向かうこの時間の空は地上の星がなりを潜めてるからなのか眩い光を放つ星が綺麗に見えるタクシーの後部座席の背もたれに身体を預けぼんやりと空を眺めるうちに月の満ち欠けに詳しくなった月齢4の月は早々に姿を隠して夜空は星だけの世界(見えないだけなんだけど)大きく欠伸をして瞼を閉じたこの仕事・・・続けても良いのだろうか?心の中で自問自答する一緒に暮らしていてもすれ違いばかり貴方にまで窮屈な生活を強いてる気がしてどうし
商店街の事、簡単に解決できることではないって翔さんの話から理解できた僕はそう言うことに全く疎くて右往左往するだけで何一つ役に立たないと思う翔さんが力になってくれると言ってくれただけで心の中のザワザワがおさまった気がした早く師匠に伝えた方が良いのかな?急いで下に降りていく多分、工房に居るはず工房入り口のドアを叩くと師匠の声が聴こえた「智か?」「はい、僕です」「どうぞ」その言葉を聞いて中に入って行く「どうした?もう少し使いたいの」
二人だと思ったら蒼さんも一緒だった「あけましておめでとうごじゃいます」さとち君が愛らしい声で挨拶をしてお辞儀をするさとし君に続いて全員が年賀の挨拶を始める店中が笑顔と「あけましておめでとうございます」で溢れていくこの人たちが入ってきただけで店の中の空気が変わった気がしたまるで紅玉さんに居るみたいだ「蒼さん、ありがとうございました智も気に入ってくれました」師匠が深々とお辞儀をする「それは良かった」「あおちゃんがつくったぷれーとのこと?」
父ちゃんが僕の福袋母ちゃんが師匠の福袋をゲットして上機嫌で帰って行った見送りは出来なかったけど何だか親孝行した気分(まだまだだけどね)翔さんが僕の福袋を手にしてたから吃驚したもしかして父ちゃんから聞いたのかなぁ?福袋は1時間も経たないうちに完売元々、総数が少ないから売れるのは早いけどいつもよりも早かった気がする師匠が『福袋は完売しました』と書いた紙を扉の外側に貼りに行き「あっという間に客が引く(笑)」一気に閑散とした店の中を見回しながら苦笑い
お昼ご飯を食べ終わったあと3人が「蒼い扉」の絵をじっと見詰めた「どうかした?」「素敵な絵だなって思って・・・背中を押すって言うよりそっと寄り添ってくれる絵だなぁって・・・」僕がずっと感じてた想いを言葉にしてくれるシゲちゃん「それは僕も思いました・・・背中を押される感じではなくてそっと肩に手を置かれ決めるのは自分だよここで見ていてあげるからって言われた感じ」侑李が優しい笑みを浮かべて納得したように頷く「見守られてるんだ
爽やかな笑みを浮かべた貴方がとても嬉しそうな声で挨拶をする「おはようございますどうぞお入りください」俺の顏を通り越して母と祖母へ視線が向く(そこは真っ先に俺じゃない?)口を尖らせたら祖母が後ろでクスクス笑った「翔さんもどうぞ」その笑顔で目尻は下がるはデレデレの顔になるのが分かる今度は母迄クスクス笑い始める「開店前なのに良いの?」ここはデレデレの顔を引き締めて中の様子を伺いながら訊ねる「師匠のお許しを頂いてるので大丈夫です」扉を
貴方のjewelryに添える一文を考えるのに頭がいっぱいで話について行ってなかった肇おじさんの絡繰り時計?それが家にある?どこでどう繋がってる?祖母が先頭に階段を上がっていく二階に上がった所で本来であれば俺を待つはずなのに躊躇いなく扉の絵がある部屋のドアノブを握り締めた母が驚いた顔で俺の方を向く驚いてるのは俺の方「祖母ちゃん、二階にも上がった事があるの?」祖母がドアノブをに触れながら「あら、そうね・・・でも・・・多分・・・この部屋が一番
紅玉さんの入口のドアには『close』の札が掛けてあった「今日はお休みですか?」蒼さんに訊ねるとニヤリと笑って「家の店は不定休気が向いた時しか開いてない(笑)」「それは不定休とは言わないですよ(笑)」「そう?」休みが決まっていないいつも開いているお店だと思うけど「はい休みが少ないお店が使うと思いますが(笑)」「それなら当たってるよチビが来てから、お店は開いてる事の方が多い」「そうなの、おいらがおみせばんちてるから!」「ああ
ランチに付き合ったらそのまま家に帰る予定だったが肇おじさんの絡繰り時計がどうしてもみたくなった「祖母ちゃん、今日帰るの?」「ええ、帰ろうと思ってるけど」「じゃあ、俺が送っていくよ」「そんな暇があるの?智ちゃんのパンフレット用のキャッチコピーは?」「うん、色々浮かんではいるけど肇おじさんの絡繰り時計を見たら閃くかなって思って」「ああ、それが見たかったのねな~んだ・・・ちょっとがっかりねぇ」祖母ちゃんが大袈裟に肩を落とした「私
昼過ぎから何度もラインを見ては溜息俺が送った文に既読が付かないのだどこかに出掛けているとしても携帯は持っていくはず全く見ないとは考えられない考えられるとしたら映画館に居るとかくらい?見たい映画の話など聞いていない(有ったとしても、行くなら俺とだろう)それに映画館に行くまでの道すがら携帯の確認は出来るはずつもりは、今回に限りその可能性は低い過ぎていく時間と共に俺からの文字の羅列が増えていく最初のラインをしてから既に3時間近く何の音沙汰もないというこ
明日プレゼンしますって言ったけど仕事は大丈夫なのかな?段々心配になってきた翔さんの仕事の妨げになったら大変「翔さん、お仕事に差し障りはないですか?」「何が?」「明日プレゼンに来るって言ってたから毎日だと・・・」「ああ、それは大丈夫順調すぎるくらい進んでて今はかなり余裕がある」心配は無用だよって顔をしてにっこり笑う「本当ですか?」右手を胸元近くであげて「嘘はついてないよ」ってにっこり笑う「それなら良いですが・・・」
下に降りていくと内側のカーテンは閉まったまま師匠、店を開けるつもりはなさそうだ奥の机に向かって何かやってる声を掛けて大丈夫なのか分らず暫く様子を伺うことに俺の視線に気が付いたのか顔を上げてこっちを向いた「邪魔しました?」「邪魔してないよちょっとデザインが浮かんだから走り書き」「それを邪魔って言うんですよ」「閃いた時に書き止めるだけのもの」そう言って、一枚の紙をこっちに向けた傍に寄って行ってみるとデザインと言うよりメモ書き俺が見てもさっぱり分
編集君から貰ったお土産コットンキャンディーは健太君へのお土産にさせて貰った天の川をイメージした青を基調にした綿飴何だか童心に戻った気分だ彼を見送ると同時に家を出て実家に向かう玄関を開けて中に入ると既に父が帰宅していて酒の準備をして待っていた「ただいま、父さん早かったね」「そうか?最近は大体この時間だな」俺の中の父はいつも忙しくしてたイメージ帰りもかなり遅かったけど今は違うらしい如何に実家に戻ってなかったのかは明白母がクスクス笑って「お帰りな
僕のジュエリーのキャッチコピーを翔さんが・・・夢のような話で体がふわふわって宙を浮いているような感覚・・・もしかして全部夢だったりして思わずほっぺを抓ったら痛くて夢じゃないって再確認ショーケースに飾ったジュエリーを一点ずつ取り出して携帯で写真を撮っていくその行動が凄く神聖に思えて息を潜めて見ていた全部撮り終えた後大きく息を吐いたら師匠と翔さんのお母さん、お祖母ちゃん3人も同じように息を吐いた「ふふ・・・マジマジと見ちゃったな(笑)」師匠
紅玉さんの建物全てがアンティーク実家よりも前の建物だと思う「翔さん・・・蒼さんって・・・ここにずっと住んでるみたい・・・」僕の言葉の意味が上手く伝わらなかったのかキョトンとした顔をする「ずっと住んでるんじゃない?」やっぱり伝わってないなぁ・・・あり得ない話だから伝わらない方が良いんだけれど「そうですね・・・僕の考え過ぎ・・・」荒唐無稽でちょっと恥ずかしくなってきた「建てられた頃から住んでるって意味でしょ?この洋館の主って
工房に戻ってからも興奮が冷めないミステリー時計どうやって作ったんだろう?翔さんに明日予定の連絡を貰える様にラインをして作業を始めようとした時、携帯が鳴った画面には翔さんの名前『はい、大野です』『智君、懐中時計が見つかったの?』声がものすごく驚いててでもその声の中にワクワクした気持ちが見え隠れしてる『ええ、翔さんの家の仕掛け時計の話をしてる時そう言えばって・・・思い出して金庫の中から出して来てくれました』「『仕掛け時計ではないんだよね?』
遅い時間なのに待っててくれたその言葉が嬉しくてどうしても声が聴きたくなって電話を掛けた声を聴いただけで優しい気持ちになれてその余韻に浸りながらベッドに潜り込んだ直ぐに夢の世界に誘われてドアを叩く音で目が覚めた「さとしおにいちゃんおきてる?」ちょっと遠慮がちな声だけど嬉しそうな声だって分かる「起きてるよ」「おはようございます」今度は元気の良い声と共にドアが開く「おはよう!」「ああ、いまおきた?」「バレた?」「うん(笑)」健
祖母の家は実家から少し離れた閑静な場所にある母が同居を申し入れても住み慣れた家から離れたくないと一人で暮している『動けなくなったらお願いね』って笑うけど祖母には祖母のコミュニティがあるらしく中々重い腰を上げようとはしない「祖母ちゃんの家は誰が建てたの?」祖母の家は残念ながらハイカラな洋館ではない木造モダニズム建築で外観は民家風の大きな切妻屋根がシンボルだ見た目は日本家屋だただし、間取りはかなり斬新今で言うロフトがある平屋建て居間は吹き抜けになっている「
リビングに戻ってくると完璧に出来上がってる二人凄く楽しそうに談笑してるそんな二人を離れたところで見てる方が楽しい「智ちゃん、一緒に飲まないの?」マダムがダイニングの椅子に腰かけてお茶を飲んでた「お邪魔かなって思って(笑)」「そんなことはないわよ貴方が来るの待ってるみたいよ」二人に視線を向けてにっこり笑う「ふふっ・・・ここで見てる方が楽しいかも(笑)マダム、僕の相手をしてくださいますか?」「あら、私で良いの?」「はい、あそこま
情けない事に酔いつぶれた・・・目を開けたら見馴れない天井記憶が・・・飛んでる頭が重くて・・・二日酔いの様相貴方の隣に座って『翔さん、飲み過ぎです』って可愛らしい顔で睨んでたのは何となく憶えてる「おにいちゃん、まだねてるの?」小さい声で訊いてる「どうかしらねぇ・・・遅くまで起きてたから寝かせておいてあげましょう」同じように小さな声で答えるマダム起き上がろうとするけど頭がズキズキ・・・調子の乗って飲み過ぎたツケだ「さとしお
下に降りていくとシゲちゃんと侑李が来てた「あれ、どうしたの?」「Freestyleの春のジュエリーが飾られたって聞いて飛んできたのに」「ショーケースが空っぽで・・・」二人とも肩透かしに有ったって顔でしょんぼりしてる「ゴメン、今お客様に見て頂いてるから」「ああ、二階の部屋で?」「そうなんだ」2人が顔を見合わせて納得したのか頷き合ってる「説明しただろ?」師匠が苦笑いを浮かべながら「俺が意地悪してるって二人が睨むんだよ」