「平和の礎(いしじ)」は沖縄県南部の糸満市にある。紺碧(こんぺき)の海を望む摩文仁(まぶに)の丘。沖縄戦で亡くなった約24万人の名を刻む。黒い石の刻名碑に連なる白い文字の氏名は、国籍や軍民といった立場を問わず記される。どの人にも平穏な日常があった―。その当たり前の事実に粛然とする▼平和の礎は戦後50年の1995年に建立された。尽力したのは当時の大田昌秀知事である。一木一草もとどめないと言われた激戦地の沖縄。遺骨や遺品がなく、戦死した場所ですら定かでない人も少なくない。この世に生をうけた肉親の<唯