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心、境界線〔番外編〕①テーブルの上に置かれた小さな箱に、食事が終わりさてそろそろ席を立とうかとヨンの顔を見たウンスは思わず目線を下ろしそれを凝視した。つい先程まで普通に会話をしていた筈の彼は無表情になりコチラを伺っている。実はそれが緊張している時になる顔だと最近になって知ったウンスとしてはここで何か発するべきだろう。そうわかっている、この箱が何なのか。見て直ぐわかるデザインなのだから直ぐ手に取り蓋を開けるべきなのも・・・。「・・・」「・・・開けて欲しい」黙ってしまったウンスに遂に
学者肌の屋敷の主人は温和な笑顔で現れたそれとは対照的に祖父から三歩下がってついて来た孫娘は俯いたままだったチェ侍医今日は往診日でもないのにお越しいただいたということは縁談のお返事をいただけるのでしょうか?地位も名誉もある人物だがチャン・ビンの叔父だからかもともとこういう性格なのか物腰柔らかくチェ侍医に尋ねたはぁまぁそんなところですチャン様今日はお嬢様とお話をさせていただきたくて・・・チェ侍医はいささか歯切れ悪く答えた
チェ家女中頭ヘジャの母親ソンオクが亡くなり半月ばかりの時が流れ高麗の都は早春を迎えていたまだ冬の名残の雪がそこ此処にしゃりしゃりとした雪山を作ってはいたが暖かで柔らかな陽射しは春の訪れを感じさせるチェヨンは間近に迫った王様の愛娘ミレ公主のトルチャンチ(一歳の記念)のため祝賀の儀の準備に追われまたウダルチや高麗の軍を束ね国境の軍備増強にも精力的に取り組んでいたウンスは王妃様のご出産を夏に控え典医寺の長として相変わらず忙しい毎日を過ごしタンは生後一年と五
美味しかったわへジャの参鶏湯ますます腕を上げたわよねやっぱりへジャはすごいわタンもお代わりしてたものウンスはお腹いっぱいだからか?多胎妊娠だからか?寝台の上に寝転びながら突き出たお腹をさすりうれしそうに笑った俺はイムジャの味付けが好きだがまあへジャのも悪くはないか?うふふヨンたら褒めても何も出ないわよチェヨンの言葉にまんざらでもなさ気にウンスは答え息子のタンが蹴飛ばした薄い布団をかけ直した夕餉をいっぱい食べてぽんぽ
チェヨンは仕事を終えるとウンスとタンを連れ屋敷に戻った昼寝の効果かタンは帰った途端愛犬フンと庭を走り回りウンスはその様子を廊下に腰掛けチェヨンの胸を背もたれにしてのんびりと眺めていた少し顔色が悪いが疲れが取れぬのか?チェヨンは心配そうにウンスに尋ねたううんなんだかいろんなこと考えていたら頭が疲れただけよ心配ないわチェヨンはウンスの手に手を重ねて微笑んだ何も案ずることなどないのにイムジャはイムジャの心の赴くまま
ささやかな目映い光が部屋の中央まで射し込んでいる。東宮の朝は以前と同じ女官や尚宮、内官が集まり賑わいを見せていた。女官の一人が不安気な面持ちで内官へ駆け寄る。『申し上げます。』『ん?何かありましたか?』『はい…実は…』話し始めた女官を差し置き、昨夜を思い出す内官。『殿下は昨夜雨に濡れた様子であったな…風邪など召されてないといいが……。チェ尚宮、念の為お二人に薬湯を用意しておいた方が良いかも知れぬ…』チェギョンの準備に忙しい尚宮を呼び止めた。『はい。コン内官。すぐに準備させます
※韓国ドラマ「ドリームハイ」の最終回後の設定です。※最終回のネタバレ含みます。完全に妄想小説ですが、それでも良い方のみどうぞ~満員御礼のコンサート会場に、拍手が鳴り響く。この音は、海の向こうにも届いているのだろうか…。今日はヘミにとって100回目のコンサートだった。アンコールも含めて十数曲を歌いきり、拍手と歓声の余韻に浸りながらヘミは舞台袖に戻った。そこには昔馴染みの顔が。お世話になった先生方。かつては一緒にデビューし、切磋琢磨した「ドリームハイ」のメンバーたち。皆が花束と笑顔
無事に7年とちょっと越しのその後物語を書き終える事ができ、非常にスッキリした気持ちです。思えば、宮を見終えてからが始まりでした。2周、3周する内に、続きが見たいと願うようになりました。その後物語はラストだけが頭に浮かんでいてそこに向かって書き出したわけです。最終的な終着はここに。。それだけを念頭に書き始めておいて気付けばあちこちのドラマにうつつを抜かし、寄り道しまくりでなかなか進めなくなり、そうこうしている内に内容を忘れてしまったという救いようがないパボな私が悪い訳ですが…今思えば必
時刻は昼過ぎそろそろウンス達が来る頃かとチェヨンは集賢殿の前庭になんとなく佇んでいた前庭には盛りを過ぎたスグク(紫陽花)が咲いているウンスの二度目の妊娠はもともと悪阻も何事もなくいつの間にか初期を乗り切り安定した時期を迎えていたそろそろ元気な胎動を感じお腹の膨らみも目立ち始め順調な妊婦生活を送ってはいたが王妃様の出産が無事終わり気が抜けたのかウンスはこのところ疲れやすくなっていた閨で無理をさせている張本人だという自覚はあるがチェヨンは
一緒に夕餉をとウンスは誘ったがそればかりは御勘弁をとソンオクは逃げるように辞退した主人と夕餉を囲むなど忠義なソンオクには拷問にも思えるらしいウンスは残念がったがソンオクを見送ることにし土産にたくさんキュル(蜜柑)を渡したそれすら固辞したがウンスが無理やり手に持たせた見送りに出た庭先からまん丸なボルムタルが見えわぁ〜と皆の歓声が上がった今夜はボルムタル(満月)か綺麗ねほんとでございますねぇ母娘ソンオクとヘジャは声を揃えて答えたうふふやっぱり親子ね声
なんじゃこの騒ぎは?母親ウンスが心配で遊びに行かないとむずかるタンを父親チェヨンに託し典医寺でウンスと話をしてからやや遅れてお船のお遊び場に顔を見せたチェ尚宮は面食らった様な顔をして先に会場の警護についていた武閣氏のジュヒに尋ねたはぁ・・・空気が色めきだっておるぞ大妃様と公主様の御前だというに腑抜けの気が充満しておるそれが・・・ジュヒが微笑んだきゃ〜〜きゃ〜〜遊んでいる子供たちの黄色い声に混じり明ら
チェヨンはこのところ忙しかった戦から戻り待望の出産にも立ち会えたが王子様ご誕生の宴はすっかり延期の運びとなり集賢殿の責においてその準備を急かされていた屋敷に残してきたウンスや三つ子の様子ももちろん気にかかるやっと名前が決まり今宵は叔母チェ尚宮にも披露する予定だが叔母とはすれ違いかもしれない叔母上がウンスに名付けのことで余計な小言でも言わぬだろうかと思いもしたが叔母チェ尚宮の泣き所は息子のタンタンは母親ウンスが大好きだから母親が窮地になったら加勢
季節は移る。宮殿内を吹き抜ける風は暑さを和らげていく。かつて顔を合わせば良くない感情を互いに向け合っていた幼い皇太子夫妻は今はなく、紆余曲折の後徐々に溶け合い、今では側近達が困惑するほどの熱愛ぶりである。公務の合間を縫っては妊娠中の妻の様子を見に東宮に戻る。愛妻家の夫となったシンを内官は感慨に浸り見ていた。2人の住む洋風の建物は王朝文化からはかけ離れてはいるもののこの宮廷に新しい風を運んだ新婚夫婦らしいものだと内官は返り見ると1人頷いた。『コン内官…』硬い表情で公務を終えたシンが内官に
本日は其の十八からアップしておりますよろしければそちらもどうぞ*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆寝たか?酒の匂いをさせながらチェヨンがふらっと閨に戻りタンと一緒に寝台に横たわり目を閉じていたウンスの隣にからだを寄せた背中を向けているウンスを後ろから抱きしめて耳たぶを甘噛むとおもむろに襟の袷から手を入れたこら酔っぱらい!駄目よ悪ふざけは・・・タンが起きるじゃないチェヨンの手を払い除けてウンスはチ
得体の知れない不安におそわれたままのチェギョンは今しがた去っていった青年ヨナを思っていた。『他人じゃない…』単に弟に似ているだけではない。。夫シンが嫉妬心に苛まれる程、チェギョンの中でヨナという青年にはどこか近しい感覚を覚えていた。しかし、去り行く真際にチェギョンに接近した事で、チェギョンは全くあり得ない事に気付いてしまった。『そう…だってシン君に似てるのよ…似てる訳ないけど…でも似てる…』不可解で霧の峠を歩んでいるように不思議な感覚である。雲の中にいるようで、それでいて意識はハッキ
急ぎ康安殿に向かい王様に目通りを果たしたチェヨンは退出が認められ出仕したばかりの道を屋敷へととって返した気持ちばかりが焦る屋敷ではタンがウンスのもとを離れようとせずに布団の縁に座り込み寝入ったウンスの髪を小さな手で一生懸命撫でていたそれは父親の代わりにウンスを守っているように思えたそれを見ていたオクリョンはタンの健気さに涙してしまうへジャはそんなオクリョンをたしなめた奥様は少しお疲れなだけじゃないか泣いたりしたらよほど重病人に思えてしまうよしとくれ
いつもよりも大きな月が高麗の都の夜空に浮かんでいたチェ尚宮は屋敷に残してきたタンの笑い顔を思い出しながら王宮へ急いでいたウンスが生んだタンの妹弟がまさか三つ子とはこの時のチェ尚宮には思いもよらないことでチェ家が歓喜に包まれていることなど知る由もなかった風灯の準備は王宮の広場にすっかり整って飛び立つ時を待っている今年の暮れも変わらぬ風景だいやいやタンに妹が出来たのだからよりいっそう暖かに見えるのぅチェ尚宮はひとりごちた医仙様のご様子は
ヘジャはウンス達の昼餉の後ソクテと歳の市に出かけることにしたウンスも行きたがっていたが「急なお出かけは旦那様に叱られます」と言ってやんわりお断りウンスとの買い物は普段ならば楽しいが今日は暮れの市であちらこちらで済ませなくてはならない用向きがあっただからヘジャはウンスのおつかいだけ引き受けることにしたじゃあよろしく頼むわマンボ姐さんに言えばわかると思うけど抹茶とか化粧品の材料になるものをお願いねあとは紅を五つ買って来て五
『もしもし…なんだこんな朝早くに』『タン…大事件だ…』『なんだよ!』『女…』『は?女?女がどうした』『いや、だから女だったんだ』『え??なん、、本当なのか?確かに…確かにウンサンの腹の出方が女ではないかと母さんが言ってたが…いや、待ておいヨンド!なんで俺も知らない子供の性別お前が知ってる!』電話口でタンは1人憤慨していた。『かぁーっバカか、何でウンサンの腹の子の性別をお前に言うんだこんな早朝に。お前と話すと緊張感がなくなる』『ああ、それもそうか。で?何が女?』『あの…俺が連れ
湯殿から見える月はわずかに欠けていたウンスがチェ侍医の鍼灸指南を受け始めてから数日が過ぎて今のチェヨンに必要な経穴をウンスはほぼ習得したまだチェヨンの身体に大きな変化はないだからこそ抱きしめ口づけ互いを確かめあう毎日いくら忙しくても朝餉は家族三人で必ず摂るお互いの話をたくさんする当たり前のことが愛しい洗い場でいつものようにゆっくり背中の腎兪のツボを押しながらウンスは言った昔から物覚えはいい方なの鍼も上達したでしょう?そうだな背中にウンスの優しい
ヨンドは不思議な力に漲っていた。ただただ体の底から湧き出す力が追い風の様に感じる。病院の玄関を出ると潜む記者たちに気付くも気にも止めずすぐにバイクに跨った。その姿はその昔、父親に乗馬を強要され反抗しつつも目にした夕陽に向かいしなやかに駆ける青毛のサラブレッドを思わせる。此方の想いなどどこ吹く風とばかりに威風堂々とした佇まいをヨンドに見せつけた。ヨンドはあの時に見たサラブレッドさながらに風の様に圧倒され呆然とするパパラッチを置き去りにした。先ずはホテルゼウスの社長室へ向かった。エレベータ
昼近くになり汗だらけになって遊び疲れたタンに行水をさせ軽く昼食を食べさせたらこてんと奥の間で寝てしまった天使の寝顔と言うけれど子供の寝顔は屈託がなくてほんとうに可愛らしいチェヨンはタンを抱き上げると子供部屋のお昼寝布団に運んだ少しの間にまたずしりと重くなったタンおしゃべりが上手でよく笑うタン愛する妻に感じる愛しさとはまた違った愛しさがこみ上げチェヨンは大事そうに布団に降ろしタンのおでこをゆっくりなでた後ろからついて来たウンス
底から③最近寝覚めが良くない。日に日にあの夢を見る機会が増え、だがその内容は禍々しいものに変化していく。二人でよく鍛錬した場所にメヒが佇んでいるが、その姿は最期に見たあの中身が空洞になった姿だった。それでも彼女は言う。『懐かしいわ、ここも二人だけの場所よ。覚えてる?』「・・・ああ。・・・」だが、“覚えている”とは口から出なかった。はたして自分が覚えているのは、こんな姿のメヒと鍛錬した場所だろうか?浮き足立つ中、集中出来ない程に木漏れ日の様に穏やかな空気を浴びてい
奥の間では待ちくたびれたタンが床に転がりむぅとした顔で天井を見ていたタンが生まれてから寒い時期には奥の間のオンドル(床暖房)か重宝しているあらあらご機嫌斜めさん?おんまぁ〜〜ウンスめがけて抱きつくタンからキュル(蜜柑)の甘酸っぱい香りがしたヘジャにジュース作ってもらったの?じゅうちゅネ〜よかったわねすでに眠たいタンはウンスの肩に顔を擦り付けねんねねんねと言っている今日も一杯遊んだものね帰って来てからフンとお散歩もしたしフンもタンに連れ
そ・・・王様のお気持ちはわかった屋敷に帰ってきたチェヨンから自分の昇進話を聞いたウンスはチェヨンの夕餉に付き合いながら落ち着いて答えたヨンはどう思う?王命ならば断ると反逆の罪になってしまうのよね?まあ建前ではそうだがいくら王様とてイムジャを反逆罪にはせぬヨンに迷惑がかからない?俺のことなどどうでも良い俺はイムジャがこれ以上抱え込まぬことを願うだけだありがとうあこれ美味しいわよどうぞへジャに頼んで作ってもら
とっぷりと夜が更けた自分の部屋でチャン・セリはぼんやり手元の茶碗を見つめていたチャン・ビンが体にいいと入れてくれたお茶はどれも優しくて温かくてお茶の湯気を見ると彼を思い出し切なくて苦しかったどうして先に逝ってしまったのだろうどうしてあの時意地を張ってしまったのだろう後悔ばかりが押し寄せて来た彼が典医寺で湯薬を守って亡くなったと知らせを受けたのはこんな風に暑い夏の日の谷間秋風を感じさせる頃だった彼が守った湯薬が医仙と呼ばれた女人を救うための薬だった
タンは毎回の公主様とのお遊び時間が面白くなかった自由闊達な母親似の性格と父親譲りの賢く優しい性格を合わせ持ったタンは父チェヨンに見守られウンスのおおらかな子育てでのびのびすくすく成長しているだが公主の立場のミレは違ったお付きの女官や武閣氏はミレ公主の一挙手一投足に気を配り危ないことはもちろんしないやらせないだからタンがミレ公主の遊び相手を務める時はのびのび遊ぶと言うよりはいかに大人しく時を過ごすかと言うことが大切になるこれは子犬や子馬と戯れたり走り回った
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽ジグザグ♣KとUの話④ヨン先輩の代わりに見てただけなのに?「これは他の医師からの話だ」医師ー?女性スタッフじゃないのか?「オウ医師のトラブルじゃなくて、俺?」あの時ウンスの周りに、あの男からウンスを庇う医師達が自分の他にもいて安心したが、その中にいたって事なのか?「・・・俺の彼女、いやもう別れたんだけど。普通の会社員ですよ?病院関係無い筈だけどなぁ」「何処であったんだ?」「何処・・・、コーヒーショップ」「病院の近くのな」「はい・・・え?いや
トルチャンチの夜並んで見た月は綺麗だったチェヨンは今宵の望月を見上げ月夜に照らされたウンスはその夜一際綺麗だったと思い出した不意にこの幸せが途切れる不安を感じ手離したくない思いが募り朝まで手離せず毎夜のこの繰り返しは不安?そうか不安な思いからかも知れぬウンスが手元からいなくなるそんなことはあり得ぬのに抱いても抱いても果てることのない己の欲にふと嫌気がさしたこれ以上幸せになることを天が許さないそんな畏れさえ感じてこれ以上ウンスを望んではいけ