ブログ記事1,353件
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。その建物は、おそらく清斎の部屋が足らなくなった時があって作られたものなのだと言われている。あくまで臨時のものだから、オンドルも通っていないし、狭い部屋が二部屋あるだけの小さなものだ。いずれ取り壊すからと東斎を取り囲む低い塀の際に建てられたが、案外しっかりした者だったので、その後、大科に向けて一人の時間が欲しい儒生などの勉強部屋のように使われた時期があった。その時に、この部屋を使った儒生が死んだのだという。学問に狂った
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。こんな歴史ある儒学の学び舎になるとさ、勿論ここにいる間に儚くなってしまった儒生だっているわけ。ん?あからさまな病気だったらさ、勿論親元へ返すだろうよ。だけどさ、大科に向けて猛勉強しすぎて、ちょっと頭がおかしくなってるとかさ、何日も寝てないんじゃないか、って周りが心配していた矢先に冷たくなって部屋で倒れてたりとかさ、あるんだよ。勿論・・・自ら命を絶った奴だっているって聞いたよ・・・。でさ、そのうちのどの人かは知らないん
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。「得体のしれないものは怖いもんだ!仕方がない!」ドヒャンは笑いながらも慰めてはくれた。けれどユニはすっかり拗ねてしまった。その顔を見て、ユニに甘い親父儒生のドヒャンは、「いいか、テムル。皆隠しているが、それぞれに怖いものはあるんだぜ。」とさらに言葉を継いだ「じゃあ、兄上の怖いものって何なの?」ふくれっ面のままのユニが聞くと、ドヒャンは顔を真面目なものに戻し、腕を組んで天を仰いだ
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。「・・・しかし、君に姉上がいるのをジェシンが知っているのはわかるが、ご本人と知り合いとは・・・君が紹介したのかね?」ユンシクがジェシンを見ると、やっぱりそっぽを向いている。うわ、丸投げだ、とユンシクはため息をつき、仕方がなくジェシンの父に向き直った。「ご存じの通り、わがキム家は使用人を置けるような状態の家ではありませんでした。ですから、ジェシン殿と親しくさせていただく間に、我が家を訪れる機会があって、
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。ハ・インスは何食わぬ顔をして成均館に戻ってきた。周囲もこそこそとうわさ話はするが、ハ・インスに直接何か言う輩は現れなかった。何といっても未だ彼の父親は老論の中でも力のある方に属し、金も持っている有力両班だ。少し違っているのは、ユンシクに対しての嫌がらせを取り巻きに命ずることがなくなったことだろうか。ただ、全くなくなったわけではない。派閥の強弱の論理はまかり通っているから、ユンシクは若いこともあって弱者としては
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。ハ・ウジュが父からその日の指揮を取り上げることができたのは、庁の長官である当時の大監と同じ派閥、老論だったからだ。賄賂とおべっかで、彼は少しずつ大監に目をかけられていった。そして一気に自分の名を派閥で響かせようと、大手柄を目論んだのだ。捕縛対象が、老論ではあるが皆から爪弾きされていた嫌われ者だったという理由もあった。何の遠慮もいらなかった。自分の地位にとってかわられるかもしれないと大監が用心していたジェシンの父を蹴落
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。ジェシンが一口に口に放り込んだ餅を、王様は流石に上品に小さめにかじった。少しだけ伸びてから噛み千切られ、王様の口が咀嚼に動く。円形に平たい餅は軽くあぶってあり、醒めていても香ばしかったから、王様の口にも合わない事はないだろう、とジェシンは腹をくくった。王様の召し上がりものは、水刺間という王族の食事を用意する部署がある。そこのものだって、王様の御前に到着するまでに毒見が入るのに、とはジェシンだって知っているのだ
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。へとへとになってユンシクがムン家の門前にたどり着いたとき、当然ジェシンは馬ですでに乗りつけていて騒がしかった。ジェシンの姿は下人たちのうろうろする庭にはなく、ユニも見えず、ユンシクは息が上がってしゃべりにくいまま、声を張り上げ、近くの下人の腕を引っ張った。「・・・キム・ユンシク・・・と申す・・・!ジェシン殿に取り次いでもらいたい・・・!」官吏の姿に、さすがに口調だけは丁寧に、しかし、立て込んでおりまし
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。少しぼうっとしていたらしい。ふと気が付くと人の気配を感じ、ユニは顔を上げた。扉が軋み、入ってきたのはジェシン。「・・・泣いたのか?」つぶやく声に、ユニは自分の頬をなぞった。湿った感触に、ジェシンの香りに包まれながら泣いていたことを初めて悟った。「・・・いやか?」短く、けれど悲し気に低く響く声にそっと首を振る。はっきりとした涙のわけはユニにだってわからない。けれど、いやなのではな
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。二日後から出仕を再開したジェシンは、ユニとの婚儀をあちこちで祝われ、挨拶に疲れて不機嫌だった。贅沢だよなあ、とヨンハが笑い、ソンジュンも苦笑する。ユンシクは実姉の嫁入り故当事者だ。こちらも祝われているが、ジェシンよりはだいぶ少ない。南人の官吏が少ないからでもあるし、新人官吏故知り合いも少ない。だから半分は他人ごとのようで、ソンジュンと並んで苦笑していた。「うるせえよ・・・どうせ親父に伝えてほしいだけだ。」
㊟フォロワー様500名記念リクエスト。成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。「ううサヨンのあわてんぼう・・・。」「お前が転びかけたのがまず間違いの元だ。」「うう・・・。」薬房にたどり着く途中で、抱え上げられた肩の上で必死に説明をし、足を痛めたのではないとようやく納得してもらって、ユニは地上に降りることができた。紛らわしいことすんな、というジェシンの小言に、一応反論してみたものの、見事に言い返されてユニはうなるしかなかった。
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。「・・・大奥様!」ユニは挨拶も忘れて傍に行った。久しぶりなどというものではない。本の数日前までお傍にいたのだ。「・・・ああユニ。お前が会いに来ると思うとうれしいやら寂しいやら・・・会いに来ても別れのためであろう?胸がいっぱいですよ、私は・・・。」ユニも胸が詰まって何も言えなかった。それほど近くで仕え続けたのだ。かわいらしい、母のようなユニの女主人だった。「いや、あなたが連れていかれて一
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。鐘は今夜も鳴る。誰の耳にも、同じように聞こえるはずだ、鐘は一つしかないのだから。けれど、とジェシンは床の中で温かなユニの体を抱きしめながら聞く。あんなに何の感動もなく聞いていたただの時を知らせるだけの音が、今、こんなにも美しく聴こえるものなのか、と思いながら。婚儀を挙げてから時は経ち、間もなくジェシンは王様から指名された仲間たちと共に清に留学する。王様に期待されている若き才能の一人として誉れある指名だ
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。「・・・恥知らずな・・・。」怒りに震えるジェシンに、父も腹立たしそうな声音をもう隠さなかった。「もっと腹の立つことを教えてやろう・・・ハ・ウジュは・・・キム家のことを忘れて居ったのだ。借財を追わせる際にどこの誰の家と聴いていたのにも関わらず気づかず、そしてそこの一子が・・・娘が我が家に預けられていることも忘れて居ったのだ。いや、わしの顔を見た時には思い出したのだろう、私も親代わりぐらいをせねばならない
第7章韓国ドラマ映画79.ソンギュングァン成均館スキャンダル❷私は元々テレビってあんまり好きで無くどちらかと言うと本を読んだり歌を聴くのが好きです。ラジオも「ながら聴き」をしやすいので好きでした。特に車の運転時には楽しいですね。若い頃からNHKの大河ドラマ以外殆ど観なかった私のような人間も珍しいでしょうか?いえ、最近の若者もテレビ離れが激しいと言いますから、少々通じる部分が有るかもです。しかし今やブログ執筆をする様になり、ヒマさえ有ればテレビをチェック
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。その時、ジェシンも正しいその事件のあらましを知ったのだ。ジェシンだって当時たったの5歳。いきなり現れた赤ん坊のことを鮮やかに記憶していたとしても、その残酷な理由を周りが事細かに説明することなどあるわけもなく、周囲のひそひそ話を繋ぎあわせて大体の事情を把握していっただけだったのだから。当時ある罪を犯した両班を捕えて罰するべく動いていたこと。証拠を固めて捕える段になって、本来は指揮するはずだったジェシンの父に、今
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。昼餉を終え、ジェシンとソンジュンは連れ立って職場に向かった。男の食事の時間などあっという間だ。喋っているとはいえ、食い、少し話をすれば、休息の時間など特に決められていないが、仕事に戻らねばならない気になる。その辺りがやはり新人ではあるのだ。二人は研修がてら配属されている職場が近い。ヨンハとユンシクは昼餉を食べた庭の隅からはジェシン達と反対方向の建物に向かう。ヨンハはこういう風に皆が大体集まりやすい場所も見つけ
㊟一周年記念リクエスト。どけ!お前ら!離れろ!酒を飲みながら纏わりつく仲間たちを蹴散らして少しできた隙間。こいつら、以前はこんなに俺にくっついて来なかったのに。と思いながら見た光景。ソンジュンとジュンスに挟まれてはいるが、膳を一つ挟んで、正面には酔っ払いのドヒャン。横に一応ヘウォンがついてはいるが、全く気にもせずに、ユニだけをかまっている。「ホレ、食え。たくさん食っていけ!」箸でつまんだ肴をユニの口元へと運ぶ
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。ある日ジェシンは父親に呼ばれた。帰宅日でもない日の、進士食堂での夕餉も終わった後のこと。使いに来た下人に促されるまま、ジェシンはその下人を供に屋敷に戻った。激務の父親が屋敷に早いうちからいることは少ない。通常の仕事以外にも、派閥の者との会合があり、その上兄ヨンシンを陥れた者たちの足元を掬おうと密かに調べを進めていることも、ジェシンは薄々感じていた。父はけして兄の無念を忘れてはいない、それはジェシンの反抗心を少
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。ジェシンは本当に迎えに来た。薬種屋と貸本屋を回ったユニの前に、道の傍の木にもたれて腕を組んでいた。ユニを見ると足早に近づき、腕をとり、するすると人のいない路地裏を器用に通り曲がり、ある建物の裏口からするりと入り込んだ。借りるぞ、と一言かけると、一室にさっさとユニを連れていく。何の変哲もない部屋だったので少し安心したユニ。あるのは長座布団と小机と小さな火鉢。火鉢には湯気の立つ鉄瓶が一つ。その傍らにはおそらく酒の
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。「よくも・・・恥をかかせてくれたな・・・。」掌議室から下斎生達達は追い出された。そう、恥だ。縁談の一つや二つ、という事にはならない。話が公になる時点で、家同士では話が付いてるものなのだ、両班の縁談というものは。今回は、親同士で話しがまとまる前に、インスの父親が吹聴して回り、ソンジュンがはっきり断った時点で、まるで『破談』になったような形になってしまったのだ。けれどそれはまだ老論の中での話に収まっていた。やはり
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。「・・・あとの一人はどうなったんだ?」ヨンハが聴くと、ジェシンははあとため息をついた。「母親・・・実の母親といるぜ・・・必ず跡を継がせるように、と前王様がお命じになって、それは流石に当事者ではなく現領議政…当時は何だったかな、大監になりたててどっかの部署の判書をやってたから新進気鋭に見えた奴に後見を任せたらしい。その家は南人だったんだ。」現王の下で領議政を任されている男は、その頃ようやく政治の
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。白い体が白い練り絹の寝衣の間から顔を出す。初めて唇をあわせた花嫁は、白い肌を徐々に紅に染めていく。インジョンの鐘が鳴った。このまま飲み明かそうか、とヨンハはソンジュンに笑いかけた。「・・・父だってあの時・・・あの時奇禍にあったキム家の娘ごを保護する、という道があったはずです・・・。派閥の者がやらかした失態を救う前に、被害に遭われた一家を救うべきだったのは父のはずです。」ヨンハがソンジュ
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。ユニがジェシンの母の就寝の世話をして部屋にやってくると、ユンシクはすぐにハ・インスの言伝を伝えた。「・・・もうかなり前のことですし、私はお母様にその時守られていましたから。それに、そのお方には関係のない事なのに・・・。そのお方がした事ではないし、ご存じなかったのでしょう?」「勿論、ご存じなかったよ、姉上。けれど西掌義にとって、お父上の所業の中で一番許しがたい事だったんだよ。お母上様と妹君を大事に守って
㊟一周年記念リクエスト。成均館スキャンダルの登場人物による創作ですご注意ください。小川の畔の小道を馬はぽこぽこと歩いている。ユニはジェシンに腰を抱かれて馬の背に横座りしていた。人など通らない小道。長衣もはずし、初冬の冷たい風を頬に受けて、ユニは何度も深呼吸した。王様とは馬には乗らなかったわ。王様は、身体も鍛え上げ、武術もよくする。当然馬術も素晴らしいと聞いていた。しかし側室は、たとえ里帰りでも保養地への行幸でも、
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。あの夜はうだるような暑さと夕方に激しく降った雨の湿気とでいらだつような日だったという。けれどジェシンは・・・その時まだたったの五歳だったジェシンが覚えているのはそんなことではない。明け方に聞こえた小さな泣き声。部屋から顔をのぞかせると、成廊棟から聞こえる父の怒鳴り声。母の部屋の扉があけ放されていて、ジェシンは不安になった。暗い廊下を、ぽっかりと開いた内棟の扉に向かう。泣き声が父の大きな声の合間に聞こえる。そろそろと近
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。弓の対抗戦である手射礼は、両班の男子としては教養の一つである弓の腕前の競技大会だ。基本部屋ごとの対抗戦になるが、ヨンハのように贅沢に一人部屋にいる者は、他の部屋のものと組んで三人組になって参加する。ジェシンは昨年までは一人でのうのうと部屋を占拠していて、この大会には面倒がって出なかった。今年も面倒は面倒だが、出ないわけにはいかなくなった。ユンシクが喧嘩を買ったのだ。吹っ掛けられた喧嘩。ハ・インスから。この競技
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。しばらく泣いた後、シクが来ている、と優しく教えるジェシンの声に、ユニはうなずいた。「・・・サヨン・・・手鏡のようなものでいいのですけれど、ございませんか?いくら何でもこの顔じゃユンシクが心配します・・・。」「別におかしな顔してねえぞ。」泣いたってお前はいい女だ、とぼそりと言ったが、そこはユニに甘いジェシン、下女を大声で呼んで言いつけた。勿論ジェシンの居室に鏡などあるわけがないから。あち
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。半月ぶりに見たユニは、一層娘らしくなって見えた。豊かな頬、黒目がちの大きな瞳が彼女を童顔に見せていたが、それでも鼻筋が繊細ながらも高めに通り、表情に陰影をつけ始めるほどには大人に近づいている。ユニの亡き父は落ち着いて立派な容貌をしていたと以前に聞いた事があった。屋敷で同じ派閥の家の子弟に学問を享受していたユニの父を覚えいてる南人の両班は何人もいて、皆口をそろえて美しい男だったという。死に顔を見たジェシンの父も、苦悶の
㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。ご注意ください。帰宅日前日を迎えて、他の儒生の遊びの誘いにも乗らず、まっすぐに屋敷に戻ったジェシン。ユニとの約束は絶対だ。それに、先日の実家に絡んだ借金騒ぎが全く耳に入っていないとは思わない。広い屋敷だが、人の目、耳はあり、応対した母の様子がおかしかったことだって目の前で見ているはずなのだ。内棟からめったに出ることのない母は、ユニを日中手元に置くことが多い。自分が刺繡をしたり、屋敷の家政について指示したりしている横で、ユニに好きなこ