ブログ記事1,985件
「回し飲み・・・・」林君の奥様を見つめたまま、私は言葉を失った。「奥様・・・、あの、失礼ですが、奥様のお名前は?」「佐和子です」「佐和子さん、ですか。いい名前ですね」「そりゃどうも」少しばかり和んだ雰囲気をかき消すように、彼女は言葉を続けた。「ご存知ですか、どうして中川さんが私の夫の後任として選ばれたか」私自身にとっても、確かにそれは疑問ではあった。そろそろ海外に行かされるのだろう。薄々、そんなことを考えてはいたが、まさかこのアフリカの
「ここまで来いよ、桔梗!」「ねえ、疾風、待ってったら!」戦国の黎明期、天文年間。尾張の国では、後の歴史を大きく塗り替えることになる武将、織田信長がまもなく誕生しようとしている。だが、ここははるか遠く離れた、海の孤島。南国特有の眩しい日差しの下、走り回る少年と少女は、迫り来る戦国の騒乱など無縁の世界にいる。「今日の海はいつも以上に綺麗だぜ、桔梗!」粗末な小袖を身に纏った少年、疾風。疾風(はやて)、と名付けてくれた両親はもうこの世にはいない。彼が
「あそこに見えるコテージでランチをとりましょう」前の車で、ハネスが4人にかける声が私の耳に届いた。だが、彼らはランチになど興味を示さず、妻の体を弄ぶことに没頭している。「奥さん、上手になりましたね、腰使いが」「そんなこと言わないで、北原さん・・・、あっ・・・、あっ・・・・」助手席からいつしか後部座席に移動した北原の上で、妻の肢体が前後に動いている。妻の甘く、短い喘ぎ声が、男たちの興奮を一層高めているようだ。「奥さん、ほんといい体してますね」行為を終
「この場所が一番好きよ、わたし」久しぶりにここにきた気がする。漁に出る毎日を、ただ夢中で過ごしてきた疾風。小走りに先を行く桔梗の後ろ姿を見ながら、彼は幸せな気分に浸っていた。ギラギラと照りつける南国の太陽、吸い込まれそうな青空、そして水平線にまで広がる紺碧の海。変わらないや、ここは・・・。疾風もまた、桔梗と同じ気持ちだった。子供の頃から彼女と転げるように遊びまわった、崖の上に広がる草原。島の中で、疾風はこの場所が一番好きだった。桔梗と一緒に来
林の中に消えたカートは、姿を現そうとしない。「中川さん、次のホールに行きましょう」漆黒の肌を持った現地職員たちが、ドライバーを握りしめて私に英語で声をかける。彼らの言葉を聞き流し、私は双眼鏡をただ覗き込んだ。おかしい。ボールが見つからないとしても、あまりに時間がかかりすぎだ。「行きましょうよ、早く」「先に行っててくれ。ちょっとカートを借りるぜ」困惑する現地スタッフたちをその場に残し、私はカートの運転席に乗り込んだ。妻が3人に連れ込まれた林に向
「疾風、竿を離すな!強く引くんじゃ!」ぎらぎらと輝く太陽が頭上にある。快晴ではあったが、沖に出れば出るほど風は強くなり、高まる波が小さな漁船を翻弄した。「じい、駄目だよ!全然引っ張れない!」「泣き言うんじゃない!そんなことじゃ一人前の漁師になれんぞ!」「ちっくしょう・・・、こんなでけえ獲物、無理だぜ・・・」15歳になった疾風。上背も随分高くなり、いまや精悍な若者になりつつあった。粗末な服装は相変わらずだが、剥き出しの両腕は筋肉質で、男のたくま
疾風、そして桔梗の両親は、島の西端にあるわずかな農地に暮らす貧乏な農民であった。同じ年に近所で生まれ、共に幼少の頃に両親を失った2人。そんな2人を親代わりになって育てているのが吉蔵という名の老人だった。家族がおらず、天涯孤独の身だった彼は、この島で生まれ、漁師として生きてきた。60歳になる彼は、桔梗の両親と知り合いだった縁で、2人の世話をすることを引き受けた。「じい、今日は獲れたのかい?」「トビウオが少しばかりな。疾風、さばいてくれや」「あいよ」壁
大胆に脚を広げ、妻は男の腰に自分の下半身を深々と沈めた。「あっ・・・・」その瞬間、深く甘い息を吐き、妻は快楽に耐えきれない風に上を向いた。「桔梗・・・・」ここに自分がいることを、疾風は妻に気づいて欲しいと願った。だが、そんなことが起こるはずもない下にいる隆景と手を握り合い、桔梗は夫に気付かぬまま、自分から腰を動かし始めた。「桔梗、いい眺めじゃ」満足そうに声を漏らし、男は人妻が奔放に舞う姿に視線を注ぐ。夫の知らない妻がそこにいる。喘ぎ声を
「中川君、行ってくれるね」朝一番に部長に呼び出された時、私は既に予感がしていた。初めての海外赴任をいよいよ言い渡されるという予感だ。だが、その赴任地は全くの想定外だった。「部長、行き先はどちらでしょうか」「うむ、それなんだがな」即答は避けながら、部長はデスク越しに私のことをじっと見つめた。今年35歳になる私と部長は20歳近く年齢差がある。緊張を感じながら、私は部長の言葉を待った。「すまんがアフリカに行って欲しい」「というと、我が社が社運
「待たせたな。楽にせい」二人の前に遂に姿を現した男は、一段高くなった上座から高慢な口調で言い放った。伏せたままの吉蔵に対し、疾風は物怖じすることなく、顔をあげた。妻を奪い、その体を好きなように貪りつくそうとする男、隆景がそこにいる。「ほう。お前が桔梗の夫か」自身を睨みつける若者に、彼は興味深い視線を注いだ。「妻を返してもらおうか」遠慮のないその言い方に、隆景の脇にいた一人の武士が立ち上がる。今にも刀を抜きそうな気配の配下に、殿が穏やかな口調
「桔梗、いくぜ・・・・」よだれを垂らさんばかりの表情で、慶次は自身の腰を一気に桔梗の秘密に突き立てようとした。桔梗が唇を噛み、全てを覚悟した時。「ううっ・・・・・・」上にいる慶次が、突然後頭部を抑え、傍の地面に倒れ込んだ。こぶしくらいの大きさの固い石が、表面に血を滲ませて転がっている。「桔梗、大丈夫か!」すんでのところで慶次の毒牙から逃げることができた桔梗は、素早く立ち上がり、石が飛んできた方向を見た。「疾風!」腹ばいでうごめく慶次に唾を吐き
どこまでも広がる青空、そして大草原。その中心を突っ切るように進んでいく2台の車を、アフリカの太陽が歓迎している。「ボス、これをどうぞ」運転席にいるジムが、双眼鏡を私に渡す。「そうだな、これが必要だな」「ええ」私にとって、初めてのサファリツアーだ。野生の王国ともいえるこのサバンナには、数多くの動物が生活していると聞く。上下に揺れながら草原を飛ばしていく車の座席で、私は双眼鏡を構えた。私の目的は、しかし、動物たちを探すことではない。ポケット
「帰国する前に妻が少し中川さんに伝えておきたいことがあるみたいで」小声で話す林君の後ろで、奥様が私に向かって小さく頭を下げた。おとなしそうだが、それでいてどこか鋭い目つきを持った美しい女性だった。私の妻は身長165センチだ。林君の奥様もまた、同じように長身で細身のスタイルをしている。30代前半、年齢もまた私の妻と同じくらいかもしれない。「いいよ、実は僕のほうも少し聞いておきたいことが」依然として盛り上がっているテーブルのほうをちらっと見た後、私は林君に答
「佐和子・・・・」椅子に座ったまま、妻は橋口に唇を吸われていた。ワンピースが僅かに乱れ、剥き出しになった妻の肩にブラの紐が覗き見える。「奥さん、いい躰してますね」宮野の手が、ワンピースの上から妻の胸の膨らみを確かめるように動いている。「いやんっ・・・・」巧みにいじめてくる彼の指先に、妻が瞳を閉じたままうっとりとした声を漏らした。北原とも手を握り合いながら、橋口との口づけを次第に激しいものにしていく妻。「奥様、随分大胆ですね」私の後ろに立った林
「ちっ・・・・」薄い壁の向こうから聞こえる疾風と桔梗、そして吉蔵の楽しげな会話。粗末な木製の壁は隙間だらけ、その奥から届く囲炉裏の火の灯りが、こちら側にいる少年の頬を照らす。悔しげに舌を鳴らし、慶次は静かにそこから歩き始めた。疾風と桔梗、2人から3歳年上の慶次は、13歳になったばかり。小さな山を一つ越えた隣村で生まれ育った彼は、2人と同じように農家の子供であった。だが彼の家は富農であった。小作人を何家族か同居させるほどの大きな家で、一人息子の慶次には将来
「慶次、早くってば」服を剥ぎ取られた上半身を隠そうともせず、桔梗はその胸元を彼の口に近づけた。「慌てるなよ、桔梗」懸命に興奮を先送りしながら、慶次は桔梗の首筋、そして鎖骨のあたりに舌を這わせていく。体験したことのない震えるような感覚が、桔梗を何度も襲う。やめてっ・・・・彼の頭を抱え込んだまま、桔梗は密かに顔を歪め、顎を上に向けて小さく首を振った。「声出していいんだぜ、桔梗」女の胸のふもと付近に口づけを与えながら、先端をもう一度つまんだ。「あっ
自宅で酒を飲むことは、私には随分と珍しいことだった。しかも酒の席でもあまり口にはしないウイスキーのボトルが、目の前のテーブルに置いてある。深夜のリビングルーム。何も知らない妻は、既に寝室で熟睡している。「・・・・」確かな緊張を抱えながら、私は氷が入ったグラスに黄金色のアルコールをゆっくりと注いだ。「どうだった、変わったことはなかったかい?」「あっという間の1週間だったわ、あなた」昨日、隣国への出張から戻った私に、妻は以前と変わらぬ様子で笑顔を見せた
妻の服がはだけ、薄手の生地の下に隠された肉体が露わにされていく。「惚れ惚れする体じゃ」目の前に夫がいることに構う様子もなく、隆景は桔梗の服を広げ、上半身を剥き出しにした。「堪忍してっ・・・・」「したいんだろう、お前も」「・・・・」男の口が、妻の胸に吸い付いた。「あんっ・・・・」彼の頭を抱え込むような格好で、人妻は妖しく悶えた。広大な屋敷があるこの高台から、島を取り囲む海が見える。強い日差しが降り注ぐ昼間にもかかわらず、隆景は激しい興奮を
「えっ、海外駐在?!」その知らせを聞いた妻は、舞い上がった様子で声を弾ませた。海外旅行が好きな彼女にとって、駐在員の妻になることはある意味で夢だったのだろう。「でも行き先がとんでもない場所だぜ」「どこなの?」「アフリカのここだよ」私は妻に国名を教えた。子供の頃、社会の授業で地図帳を眺めていたときの記憶が一瞬よぎった。名前は聞いたことがあるが、正確にはそれがどこにあるのかわからない。そんな国なのだ。だが、妻は困惑する様子を見せることな
二人の後方から、勝ち誇ったような声が届く。「もう逃げられないぞ!あきらめるのじゃ!」長躯の武士が叫んでいる。その周囲には、弓を構えた何人もの武士たちが、矢の先端を疾風、そして桔梗に向けていた。「観念しろ!命だけは助けてやってもいい!」武士の言葉に、疾風は笑みを浮かべた。「俺はおまえたちの主人の命を奪った男だ!そんな戯言は信じないぜ!」草原の入口に並ぶように立つ武士たち。数十人、いや数百人いるのかもしれない。崖の端にいる二人とは、なおも距
いったん引いたその手を、橋口が再びテーブルの下に伸ばす。「もう、橋口さんってば」うまくあしらうようにビールを注ぎながら、妻は妥協するように彼と指先を絡めた。誰も見ていないテーブルの下で、妻の指が上司の手に好きなようにいじめられている。「奥さん、俺たちとも仲良くしてくださいよ」妻と接するほどの距離にまで椅子を近づけながら、北原が赤ら顔で声をかける。さりげなく妻の背に置いた手を動かしながら、彼は宮野に目配せするような仕草を見せた。「奥さんはゴルフとかしな
想像せずにはいられなかった。目の前にいる美しい奥様が、上司たち3人に、しかも夫である林君の目の前で・・・。本当だろうか。そんな私の疑念をかき消すように、奥様は言った。「主人に聞いてください。嘘ではありませんから」「・・・・」「私も奥様みたいだったんですよ、最初、この国に来た時は」「私の妻、みたいだった?」「初めて海外で暮らすことに舞い上がってしまって。今日の奥様みたいに、あの3人とも楽しくお酒を飲んで」「・・・・」「ゴルフにも連れて行っ
ゆっくりとした足取りで、疾風は家に近づいた。そこを取り囲むように立っていた数人の若い武士たちが、鋭い視線を彼に注ぐ。「お前が疾風か?」頭と思われる男が、冷静な口調で質問を投げた。俺の名前を知っている。まあ、そうなんだろう。彼ら武士たちにとって、最下層にいる庶民のことを調べ上げることなど、たやすいことに違いない。「ああ」挑発的な視線で、疾風は彼を見つめた。「お前、農民の分際で、なんだ、その無礼な態度は!」すぐそばにいた別の武士が、そう叫ぶ
昼間、あれほどに高かった波が、今は穏やかな調子で岸壁に寄せてくる。森に豪雨をもたらした雨雲もとうに消え去り、二人の頭上には満点の星空が広がっていた。「疾風、大丈夫?」慶次との格闘の記憶が、疾風の若い肉体にまだ深く刻み込まれている。だが、若者は血を滲ませた腕、そして足を気にする素振りも見せず、しっかりとした足取りで崖に向かって歩いている。「平気さ、あれくらい」「信じてたよ、疾風」「えっ」手を繋いだまま、疾風は桔梗の横顔を見つめた。幼さを僅かに残
「Boss,Wegottagetoutofthisplacenow!!」車から飛び出してきたハネスが、コテージのバルコニーにいた私たちに叫んだ。サバンナの地平線についに陽は沈み、周囲は闇が濃くなっている。恐怖と興奮、更には罪を犯したものだけが感じるであろう焦燥感。汗を浮かべた彼の顔には、そんな複雑な感情が入り混じっていた。「さあ、早く!」椅子から立ち上がったものの、呆然としていた私、ジム、そして佐和子の目を覚ますように、ハネスがもう一度叫ん
もう三年になろうか。夫である俺と一人息子を残したまま、妻はある男に突然連れ去られた。俺とは身分の違う、高貴な階層にいる武士、その棟梁の男に。そんな風に、疾風はゆっくりと話し始めた。幼馴染だった妻、桔梗をいかに愛していたのか。息子、佐助と暮らす貧しくも平穏な日々が、何の予告もなく、どんな風に壊されてしまったのか。封印していた苦々しい過去を紐解くその作業は、疾風にとって簡単なものではなかった。「連れ去られてから一度も妻と再会していないのか、と聞いておるぞ」
夫である私に見つめられているとも知らず、上司たちの妻への行為は続いた。見られていると知ったところで、彼らが止めることはないだろうが。私は笑みを浮かべながら、双眼鏡の中を覗き続けた。「宮野君、長いぞ、キスが・・・」妻と濃厚な口づけを続ける宮野に対し、少し苛立った様子で橋口が言った。そういう彼の手は、妻の胸元に伸びて怪しく動き続けている。「あっ・・・・・・、あっ・・・・・・・・」宮野とのキスか、あるいは橋口に与えられる愛撫か、気持ちよさそうな息を吐いてしまう
男たちは妻と一緒にゴルフコースを回ることを想像して、すっかり陽気だ。指をマッサージされて我慢できない風に悶える彼女に、橋口が好色な視線を送っている。「奥さん、柔らかい手ですね」「もう橋口さん・・・、お強いんですね、お酒」かなり酔った様子の妻は、彼の望みを叶えてあげるかのように橋口と指を妖しく絡め合っている。「橋口さん、ずるいなあ、奥さんとそんな仲良くして」他の二人がそんな言葉を吐きながら、自分たちの椅子をもっと妻に近づけていく。橋口に負けるものかという雰
「大丈夫だったかい、佐和子?」その夜、私たちは歓迎会が開かれたホテルの部屋に泊まった。この国での自宅が決まるまで、この部屋にしばらく滞在する予定だ。部屋に戻るなり、妻はシャワーを浴びたいと言って浴室に飛び込んだ。久しぶりのアルコールのせいか、あるいは別の理由からか、その表情はほの赤く染まっている。「あなた、ごめんなさい。少し飲みすぎたみたい、私」濡れた髪をドライヤーで乾かしながら、妻は鏡に映る私に言った。「謝ることなんかないさ」いろいろと言いたいこ
「もっと近う。楽にせい」顔を畳に向けたまま姿勢を崩さない男の緊張を解いてやるように、隆久は声をかけた。だが、緊張しているのは自分のほうかもしれない。どういうわけか、この男が広間に入ってきた時から、何か圧倒されるような雰囲気が漂い始めている。「それでは」流暢な日本語で返事をした男は、ためらうことなく、隆久との距離を縮め、改めて顔を下げた。「この家中では過度な礼儀は無用じゃ。頭をあげい」ゆっくりと顔をあげた男は、くっきりとした目で隆久を見つめた。これは