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「ねえ」妻のチェギョンが、シンの耳元で小さく囁いた。珍しく何も予定のない休日。使用人たちも、「今日はのんびりするように」と臨時の休暇を与えた。ブランチをシェフに作り置きをしてもらい、自分たち夫婦の寝室へ運んだ。妙に静まり返った家で、シンは愛用のソファに腰を下ろし、前から読みたかった本を開いていた。すると、ほっそりとした腕が彼の背後から伸びてきて、背中に妻の重みを感じた。シンは口の端をあげて微笑んだ。そろそろ可愛い妻が甘えてくるだろと踏んでいたのだ。彼の思った通りの行動をするチェギョンが、
チェギョンは改めて皇帝陛下である義姉、へミョンに呼ばれ、彼女の自室にいた。皇太子のスキャンダル、妃宮と義従兄ユルとの噂、皇太子夫妻の不仲説が王室を揺るがし、廃位、廃妃問題が勃発した。義誠大君との権力争いから宮廷内での放火事件まで起き、それを収める為にチェギョンは国を出た。皇太子妃の不在の間、さぞ王室は無事に平静を取り戻しただろうと想像していた。しかし、へミョンによれば、世論の反感緩和は一筋縄ではいかなかったらしい。『考えが甘かったみたいね…貴方を国から追い出せば反省したと国民は皇室を許すだ
シンの滞在するホテルの一室。一際重厚な扉の前には物々しい雰囲気で護衛官・イギサが立つ。チェギョンにも本国では三名の女性イギサが付く。タイへの公務中のシンを訪ねたユルはかつて皇太子だった。僅か5歳の頃まで皇太子として景福宮で暮らした。父・孝烈皇太子が急逝したため第二皇位継承権の叔父が帝位に就くと皇太子の位は従兄弟であるシンへと移行した。そして、母ファヨンと共に宮廷を追われた。それさえ無ければチェギョンの許嫁は本来、義誠君と呼ばれたユルであった。そんな昔に思いを馳せながらシンは口を開いた
『結婚しないか』ある日の午後、無人の教室の片隅で彼女に告げた。ヒョリンは瞳を丸くして、それでも冷静に答えた。『私達はまだ学生よ?』確かに彼女の言う通り、現実的に無理がある。皇族の結婚は早く黙っていれば勝手に妃を決められる。宮家の言いなりになり知らない女と結婚するのは癪に触る。皇太子という特殊な立場故に一般的な常識が皆無かまたは欠如した思考に陥りやすかった。『結婚』の発言自体、皇太子として生きてきたシンにして余りに突発的である。ヒョリンからすれば驚いて当然の申し出だった。厳しいしきた
「チェギョン、ここへおいで」「うん、シンお兄様」シンが声をかけると、小さなチェギョンが近寄ってきた。白い丸襟に水色のワンピース。童話に出てくる少女のように可愛らしい。シンは小さな手を握った。小さくて、小さくて、柔らかな手。彼は小さなチェギョンを見た。ポニーテールの水色のリボンが風に揺れる。「今日は、何して遊ぶの?」「チェギョンが好きな遊びでいいよ」「じゃあ、おままごとでもいい?」シンが考えた通りの答えだった。彼は年上らしくゆっくりと頷いた。もちろん、最初からそのつもりだったことは
日の落ちた東宮殿は女官や内官が慌ただしく行き交う。『いたか?』厳しい口調で女官の一人を呼び止め、女官は思わず肩を竦めた。『いえ…殿下申し訳ありません…』女官は深々と頭を下げる。『……』自室を右往左往し、更に思いついた様に突然チェギョンの部屋へ向かうシン。大きな音を立て扉を開く『…何処に行った!』シンは立ち止まるとチェギョンのベッドへ腰を下ろす。天井、カーテン、部屋の様子を見渡すと溜息を漏らした。彼女が帰還した途端に色彩を取り戻した妃宮の部屋に改めて妻の存在感を知る。『…チ
僕は知らなかったんだ。それなのに目の前に座る両陛下の顔は明らかに怒っている。シンの誕生日パーティーがあった翌日。いつものように朝の挨拶に向かった。パーティーで2人のダンスの評判が良かったと伝えられ、ホッとしたのもつかの間。皇太后が部屋を後にした途端、両陛下の表情が変わったのだ。そしてシンを問い詰める。「妃宮が池に落とされたと報告を受けている。シン、お前は何をしていたのだ!」「恐れ入りますが陛下、そうではございません。そうではなくて‥その…」咄嗟にシンを庇おうとし
深い眠りから覚めたチェギョンは、目を開けた時に広がる風景に戸惑った。―――ここはどこ?見慣れない壁紙と見慣れない家具。それだけではない。目に映る風景だけではなく、嗅覚までも「何かが違う」と訴えてきた。自分の香りとは違う、青草のような爽やかな香りとわずかな男らしい汗の匂いを感じた。―――そう言えば昨日、私…。チェギョンの頭は一気に覚醒した。夫となったばかりのシンの大きなベッドに横たえられ、逞しい腕に抱きよせられた瞬間、一日の疲れが重くのしかかり、あっという間に夢の中へ入ってい
朝から上機嫌のチェギョン。それはシンからお土産で貰ったネックレスを付けているから。朝の挨拶で目敏くそれを見つけたのはヘミョンだった。「あら!どうしたの?素敵なネックレスね、チェギョン」「ありがとうございます!シン君から頂いたんです!」一気に視線がシンに集中する。「どういう事?え?お土産?私達には?え?ないの?嘘でしょ?出しなさいよ!ホラ!!」ヘミョンの尋問は恐ろしいもので、親であっても中々止めに入る事ができなかった。お土産だと言ってしまったチェギョンも、言
「王女様、お行儀が悪いですよ。立派なレディはそのようなことは致しません」チェギョンは首を後ろに向けると、養育係のポケット夫人を睨みつけた。「んもうっ、そんなにガミガミ大きな声で言ったら、お兄様に聞こえてしまうでしょう?」「シン様に聞こえるように申しておりますから」澄ました顔の夫人にチェギョンは苦々しい顔で答えることにした。長年の経験から、夫人にこの手が使えないことは分かっているけれど。2人のやり取りが聞こえたのだろう、公式の来賓用応接室でどこかの立派な紳士と話をしていたシン王子が、チェ
得体の知れない不安におそわれたままのチェギョンは今しがた去っていった青年ヨナを思っていた。『他人じゃない…』単に弟に似ているだけではない。。夫シンが嫉妬心に苛まれる程、チェギョンの中でヨナという青年にはどこか近しい感覚を覚えていた。しかし、去り行く真際にチェギョンに接近した事で、チェギョンは全くあり得ない事に気付いてしまった。『そう…だってシン君に似てるのよ…似てる訳ないけど…でも似てる…』不可解で霧の峠を歩んでいるように不思議な感覚である。雲の中にいるようで、それでいて意識はハッキ
シンの寝室はまるで彼自身を表しているかのように、余分なものを一切省いた、どこまでもシンプルな部屋だった。「ショールームみたいな部屋ね…」クスリと小さくシンが笑った声で、チェギョンは自分が思わず声に出していたことに気づき、頬を染めた。―――私ったら、なにをやっているの?普段は、慎ましやかで思慮深い女性だと言われている自分が、うっかり本音を漏らすなんて。それも当の本人の前で。彼が面白がってくれてよかった。「申し訳ありません、殿下」彼女が礼儀に沿った“正しい返答”をしたというのに、
宮は薄暗い雲に包囲されているようだった。現に後日ある一定の時間、宮の上空の雲が渦を巻いていたと世間を騒がせた。チェギョンはシンや慌ただしく消えたヨナを思い不安を覚えていた。『お前はここにいろですって。。。何よ…ヨナは私の友人よ!』意を決すると立ち上がる。シンはヨンジンなる青年に対峙していた。コン内官も然り。『君は何処からきたんだ?』『どこから…って…まぁマカオに住む前はこの辺りだけど』『先程、姉上からの連絡で分かったことだが、防犯カメラを解析した。この東宮殿へは正門からの訪問では
天井を仰ぐチェギョンは胸が軋み、切り刻まれた様な痛みが襲っていた。紛れもなく今我が身が存在するのは、久方ぶりの【妃宮の部屋】。宮家に嫁し、東宮妃として此処に迎えられたばかりのあの頃と寸分変わりはなかった。だが、今は随分と変わって見える。ここだけでなく、目に映る全てが何処か違って見え心許ない気持ちを味わう。『他人の部屋みたいだわ…』呟くとチェギョンは孤独感を払拭するように臍より僅かに下った部分にそっと手を当て、ホッと一息の深呼吸で精神の安定を図った。シンは新婚らしい夫婦の睦みも味わう前に
それは思い返せば奇妙な出来事だった。いつもの朝、いつもの風景ではあったが何処か空気が違う。シンは目覚めて感じた胸騒ぎにすぐ傍で安らかに眠るチェギョンの手を握りしめた。『…ん…シン君?どうしたの?』『いや、、何となく…寒くないか?』『大丈夫…もう少し…このままで』?『ん?』『だから、もう少しこのまんまでいたいなって…離れたくないの…』チェギョンは腰に腕を回すと顔を隠すようにシンの胸に丸くなった。『…尚宮から聞いたか?今日の午後は国立博物館の竣工パーティーがあるが…来れそうか?』
チェギョンは全ての公務が終わり、自室に戻って来ていた。皇太后も両陛下、そしてユルも傍にいて助け舟を出してくれたお陰で大きな失敗をする事もなかったし、心配していたカヤグムの演奏もほぼ間違う事なくやり遂げた。王族も記者の反応もまずまずといった所だろう。ベッドに腰掛けてカカオトークのアイコンをタップして開く。相変わらずシンからの返信はないまま。ただ、未読のマークは消えているから読んでくれてはいるのだ。電話にも出てくれない上にメールも読んでくれなかったら流石のチェギョンも落ち込んでしま
宮廷内の庭を解放した春の祝宴会は宴もたけなわ。簡易の記者会見が終わると和やかな宴会に変わり国の要人達はシンとチェギョン夫妻に挨拶をと列が出来た。誰が見ても火を見るより明らかな歓待ぶりである。記者たちも誰が何番目に挨拶したと事細かに筆記していた。かつては孝烈皇太子の友人としてファヨンに手を貸していた記者もいた。皇室の信用を失墜させる事に加担した記者は国外へ逃亡を図る直前にシンに呼び出された。記者としての業界の信頼を無にし立場を追い、この国で一切の仕事が出来ないようにする事は造作もないが報
友人達はそれぞれに昔語りを始める。春の庭は開放され時折冷たい風が邸内を駆け巡る。『あのさ、妃宮様。。』『ファン君?』『あー、、えっと…こないだシンに電話かけさせたの俺。最近発掘した新人女優…まぁけど…ごめんな。知らなくて。そんな事になってるとは…ただ本当にアイツ…シンが元気なかったのは気になったからさ。』非礼を詫びに来たシンの友人にチェギョンは微笑んだ。『…私が居なくても。シン君には大事な友達もいるし。大丈夫かと思ってた』『なになに?シンの話?』ギョンとインもやって来る。『そう
宮にはすっかり静けさが戻っていた。春の祝宴会は追放から帰還した妃宮の為の催しであり、誰もがその突然の帰還に納得し祝福した。その一日を緊張で過ごしたチェギョンには疲労の表情が現れていたが数日経っても体調は優れぬままだった。シンは事を性急に動かした事に後悔の念が走る。一刻も早く妃宮の帰還を人々に認めて欲しかった。祝宴の後の晩餐会は殆どが仲間内での集まりであった。チェギョンの弟はシンの友人ファンと意気投合し、ガンヒョンは相変わらず冷たくギョンを遇らうが其処には一方通行ではない何かがあった。ヒ
表紙はレイのように見えますがシンですね(笑)つーわけでケンvsシン。なぜにここまで立場が逆転したのかはよく分かりません。まぁそもそも北斗神拳伝承者がシンごときに不覚をとった事がおかしいんだよなぁ…とはいえシンの攻撃で胸を切り裂かれたケンシロウ。吐き出すなら舐めなきゃいいのに(笑)さてこの戦いの最中、背後からシンの配下が襲いかかりますが…この後ケンシロウはあっさりとカーネルに背後を取られます(笑)しかしここでシンが暴挙に出ます。まぁぶっちゃけこのユリアは人形なんですが、胸を貫くと目を
1話~20話まで2013年時に書いていた筋が出来ていた訳ですが、ここからラストまではこれから書いていきます。ふぃー。表ブログに書いていたものを2話合わせたりしてますのでそれでいうと23話くらいまで進んでます。本編ドラマと同じように24話で終われたらなぁいーけどなぁ。検証やりたいからさっさとかこー。では、仕事行ってきゃす。
「ちょっとー!聞いてる?」どんなに説明しても反応のないシンにしびれを切らしたチェギョンが少し大きな声を出した。「きっ聞いてるさ!急に大きな声を出すなっ!それより…何でスーツなんだ」別に理由など聞こうとは思っていなかったが、つい口から出てしまった。「んー。何でだろうね?自分でもよく分からないんだけど…。ホラ、シン君って何でも持ってるじゃない?誕生日だからって欲しい物なんてないんだろうなー?って思ったの。それに欲しい物なんて望めば手に入るだろうし。ま、私もプレゼント
―――これで良かったの…?閉められた窓の外から聞こえる歓声のざわめきを感じながら、チェギョンはその小さな胸にもう何千回と問いかけた事柄を、再び取り出し、繰り返した。例え、答えが『NO』だとしても、引き戻すことなど不可能だと彼女には分かっていたけれども。「用意はできたかな?」男らしい声が聞こえ、チェギョンは振り返った。チェギョンが考えていたよりずっと近くに、シン王子が花婿らしい黒と白の完璧な装いで立っていた。「ええ、殿下」長く豊かな睫毛が、チェギョンの美しい薄茶色の瞳を覆い隠してしま
『改めまして本日は、この様な茶会に招いて頂き、ありがとうございます。妻、チェギョンです。この様な登場に皆様は大変驚かれたと思いますが、次代のこの国を担う子を授かり体調優れぬ中、私が一人にならぬ様に皆様に認めてもらいたい一心で参じた様です。これからも皆様の一員として宜しくお願いいたします。』シンはチェギョンを呼び寄せると、並び立つ。先程の厳しい表情とは打って変わって参加している人々が驚くほど柔らかな表情を見せた。『皆様。紹介いただきましたチェギョンです。民間から嫁ぎ、躾も乏しくそぐわぬ私を長い
「シン君、起きてっ」ドシンと背中に重みを感じる。うつ伏せで寝ていたシン・バンブスは顔を横にしたまま、わずかに上げた。睫毛が触れる距離に妻のチェギョンのブルーの瞳が見えた。「早起きだな」「うん、そうよ」シンは素早く体を回転させて、チェギョンを組み敷いた。彼女を見下ろすと目をキラキラさせている。「僕としては…もう少しベッドで“楽しんでも”いい気分だけどね」「うぅぅん、ダメダメ!それは今夜に取っておいて」チェギョンが楽しそうに笑い、体をよじりながら答えた。「そうか…それは非常に残念だ
ささやかな目映い光が部屋の中央まで射し込んでいる。東宮の朝は以前と同じ女官や尚宮、内官が集まり賑わいを見せていた。女官の一人が不安気な面持ちで内官へ駆け寄る。『申し上げます。』『ん?何かありましたか?』『はい…実は…』話し始めた女官を差し置き、昨夜を思い出す内官。『殿下は昨夜雨に濡れた様子であったな…風邪など召されてないといいが……。チェ尚宮、念の為お二人に薬湯を用意しておいた方が良いかも知れぬ…』チェギョンの準備に忙しい尚宮を呼び止めた。『はい。コン内官。すぐに準備させます
季節は移る。宮殿内を吹き抜ける風は暑さを和らげていく。かつて顔を合わせば良くない感情を互いに向け合っていた幼い皇太子夫妻は今はなく、紆余曲折の後徐々に溶け合い、今では側近達が困惑するほどの熱愛ぶりである。公務の合間を縫っては妊娠中の妻の様子を見に東宮に戻る。愛妻家の夫となったシンを内官は感慨に浸り見ていた。2人の住む洋風の建物は王朝文化からはかけ離れてはいるもののこの宮廷に新しい風を運んだ新婚夫婦らしいものだと内官は返り見ると1人頷いた。『コン内官…』硬い表情で公務を終えたシンが内官に
不二家のお菓子を購入しました今回、買ったのはこちら「107gカントリーマアムシン・じわるバターミドルパック」オープンプライス実売価格・税込267円2024年3月26日購入近所のスーパーに大量に並んでいたのを購入しました以前に記事にしている「カントリーマアムじわるバター」にチョコチップが入り〝真〟の姿になったじわるバターとのこと(笑)庵野監督ばりに〝シン〟の文字が追加されています裏面1袋当たり107g(標準11枚)入りで1枚当たり47kcal、製造は神奈川県の秦野
無事に7年とちょっと越しのその後物語を書き終える事ができ、非常にスッキリした気持ちです。思えば、宮を見終えてからが始まりでした。2周、3周する内に、続きが見たいと願うようになりました。その後物語はラストだけが頭に浮かんでいてそこに向かって書き出したわけです。最終的な終着はここに。。それだけを念頭に書き始めておいて気付けばあちこちのドラマにうつつを抜かし、寄り道しまくりでなかなか進めなくなり、そうこうしている内に内容を忘れてしまったという救いようがないパボな私が悪い訳ですが…今思えば必
ただ今24話書いてますが、、、書きたい事詰め込むとちょっと長くなるかなぁ。。よかですかね。あ!最終回15分拡大みたいな感じでいっか私の中でこれだけは書いておきたいことなので削れませんです明日も月初仕事があるのでできたら今日の内には書き終えたいですね。せっかちなもんでねシンチェで再共演してもらいたいなぁ。。次はもし再共演したらっていうの書こうかなぁ。。いや、次のは決まってるからその次かなぁ。。←好きにしろ?