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★★★4-9稽古が早く終わり、夕刻帰宅したテリィは、馬小屋にセオドラがいない事に気が付いた。まだキャンディも帰宅していないようだ。「―おや、セオドラを連れてご出勤でしたか」やれやれ、と思いながらセオドラを迎えに川沿いの小道をゆっくりと歩き始めた。キャンディが届けてくれた脚本。確かにあの脚本でずっと稽古はしていたが、新しい脚本を渡され、劇もほぼ完成した今となっては、絶対必要という代物ではなくなっていた。「これからはキャンディに無茶をさせないように、きちんと話さないといけないな―・・俺も
キャンディの「今」をろくに調べもせずに出したようなテリィの手紙の文面。短いながらもテリィらしさ全開の文面は、突っ込みどころ満載です。再現度100%の全文に登場してもらいましょう。キャンディ変わりはないか?……あれから一年たった。一年たったら君に連絡しようと心に決めていたが、迷いながら、さらに半年がすぎてしまった。思い切って投函する。――ぼくは何も変わっていない。この手紙が届くかどうかわからないが、どうしてもそれだけは伝えておきたかった。T・G書いたのはいつ?
ソネット連載中に用意していた考察系(?)原稿が発掘されました。お時間のある時にどうぞ※過去の日付で投稿していますが、実際の投稿日は6月14日です男性キャラを勝手に語るアンソニーアンソニーはあまりに早く死んでしまいます。文庫本では1巻です。アニメでは話を延ばすためかアンソニーは活発に動き、ロデオやら牛乳配達やら色々やらされていますが、漫画ではそう多くのエピソードはありません。連載が長期化すると分かっていれば、アンソニーはもっと色々やれたのに―・・アンソニーの魅力
漫画の後半を読むと、確かにアルバートはキャンディに恋心のようなものが芽生えているようです。しかし残念なことに、旧小説やファイナルではそのくだりはバッサリと欠落し、揺れ動く微妙な男心と、プロポーズかと思わせるセリフは全てカットされています。本筋と関係ないから切り捨てることができる、という解釈もできますが、少なくとも旧小説まではページの都合上だと個人的には思います。そこでまずは漫画に登場する、アルバートの感情を軸に時系列にしてみました。漫画のアルバート💖=アルバートの気持ち・セ
★★★8-3「・・・このポスターを貼った頃、俺には描いていた未来があった」テリィは壁に貼られたままのロミオとジュリエットのポスターを遠い目で見つめた。「君がこの小さなキッチンで朝食を作ってくれて、『いってらっしゃい』って送り出してくれる。疲れて稽古から戻ると『お帰りなさい』って迎えてくれて、その日あった他愛もない出来事を報告し合い、あの小さなベッドで君を抱きしめながら眠りにつく。そしてまた次の朝を迎える・・。ポスターに落書きを残して君が去った後も、その幻影はなかなか消えてはくれなかった・
★★★5-6髪を結んだその姿に一瞬別人かと思ったが、その声と威圧感は先日のハムレットそのもの。「な、なんでお前がいきなり登場するんだよっ、、!」テリィに高い位置から見下され、ジャスティンは思わずたじろいだ。「悪いね、ここは私有地だ。・・気づかずに入ってくるネズミがたまにいるが」「私有地?」一瞬意味が分からなかった。この森は公園の予定地か何かと思って深く考えたことはなかったからだ。(・・ここが敷地だとでも?)貴族の圧倒的な財力を目の当たりにし、思わず喉がゴクリと鳴る。「テリィ、
★★★2-3「そろそろ本宅のばらは咲き始めたかしら」同じ頃キャンディはシカゴへ向かう列車の中にいた。アルバートが出張で長期不在になると聞き、仕事帰りにそのまま列車に乗り込み、シカゴの本宅へ向かったのだ。近況報告はもちろんだが、町の病院から交代要員の看護婦を手配してくれたお礼も言いたかった。町の病院はアードレー家の資本が入っていた。これにはキャンディが看護婦であることと、アルバートの過去の経験が深く関係している。アフリカという辺境地で行った医療活動、記憶喪失という病との戦い。医療の
小説FINALSTORYに出てくる「エレノア・ベーカーへの手紙」を基にした一話完結の物語です。ファイナル、SONNET本編が未読でもご覧いただけます。※ネタバレには絡みません11年目のSONNETスピンオフハムレットの招待状★★★ごめんなさい、ミス・ベーカー。ミス・ベーカーのお気持ちは痛いほどありがたいのに。この招待券を見つめているだけで、わたしにはテリィの舞台が観え、歓声と鳴りやまぬ拍手が聞こえてくるような気がします。この招待券はわたしの宝物として大
★★3-3どうやら伯爵は籠城作戦をとるらしい。「朝は食欲がなくてね、レディ一人でどうぞ。朝一番なら数量限定の特製クロワッサンが有るってさ」そう言って、伯爵は未だに寝ている。一人でレストランホールに行く分には、確かに何も起こらない。平和な朝だ。きちんとした身なりの上級乗客に交じるのは、普段着の自分には少々場違いな気もするが、朝食は一日の原動力。そんな理由で抜くことはできない。「おはよう!クッキー」ホールにクッキーの姿を見つけた。限られた人員。乗務員は一人何役もの業務をこなすようだ。
★★★4-15一緒に住んで分かったことがある。テリィはかなりの読書家だ。帰宅が早い日は、夕食が済むなりカウチで読書に耽っている。「ふぁぁぁ~、・・おやすみなさい。先に休むわね」「あ、ごめん、もうこんな時間か。直ぐ行くよ、部屋で待ってろ」仕事と家事で疲労困憊のキャンディは、『直ぐ』を一秒も待てない方が多かった。雨の休演日は、ひねもす書斎に籠っていることもあるテリィ。先週は古語辞典を片手に難読そうな古書と格闘していたが、青天の今日はそんなことは無さそうだ。「テリィー!テリィー
★★★2-14「さぁ、最後の患者を診るとしよう」「今の人で最後のはずでは?」キャンディが不思議そうに尋ねると、先生はキャンディの肘をゆっくり持ち上げ、二の腕を指した。「・・あっ、忘れてました。傷口は直ぐに水で洗いましたから平気です」「いやいや、破傷風は怖いからの。わしのバッグの中に薬が―」「私は実験台ですか?全て認可前のですよね・・?」できれば遠慮したいと引きつり笑いをするキャンディに、先生はバッグの中をあさりながら「いや、特効薬がな・・おっ、これこれ、就寝前の一杯」先生は携帯用
★★★4-14劇団の裏口。その夜も多くの観客がお目当ての俳優に花束を渡そうと、出口付近に詰め寄っていた。その花道を全く関係ない人物が歩かなければならない、このまずさ。「――あの時、ながながと話し込んでいたわよね。どんな話を?」「持っている素材と才能が違いすぎると僕が言ったんです。そしたらグレアム先輩は―」さりげなく会話をしながら通り過ぎるのが常套手段なのだが、呼び止められることもしばしば。「ねえ、ちょっとそこの君たち、テリュース・グレアムはまだ中にいる?いつ出てくる?」「帰ったかど
★★★1-3テリィの演じるハムレットは瞬く間に評判になり、劇団創立以来の大ヒットを記録した。秋の公演に続き冬の公演、春の公演と延長が決まり、役者として順調にステータスを築き上げていく様が、手に取る様に分かった。大人びた顔つきや一回り大きくなった体格からは自信も垣間見えた。テリィのお芝居を観ることが決して叶わない夢だと分かっていても、自分が応援団長にでもなったかのようにテリィの活躍が嬉しくて、記事を目にする度心が躍った。ハムレットの初演から一年あまりが過ぎた頃、世界を巻き込んだ戦争が
今までの考察を受けて、イメージをまとめてみました。宜しければ一読ください。あのひとの謎かけには、全て答えております。ある程度の検証と主観が混ざった長い物語時系列スザナが死亡した後にテリィが手紙を書き、その後再会し、キャンディが30才前後に結婚しイギリスへ移住したと思っています。※三章の手紙の順番は、出来事の時系列と解釈こちらの記事参照★ファイナルで大幅に加筆されたテリィへの恋心。破局した二人が密かに想い続け、その成就を描くことで『真実の愛の物語(ファイナルの帯の言
💛前回までのあらすじイギリスの劇団からハムレットの代役の依頼を受けたテリィは、急遽渡英することが決まった。紆余曲折の上やっとキャンディと再会したテリィは、イギリスへ一緒に来て欲しいと迫る。故郷の人を残してはいけないと一度は断ったキャンディだったが、アルバートの手紙に後押しされ決意する。スザナの墓前で過去について語り出したテリィ。スザナに対して特別な感情はなく、自立を支援していたと説明したが、多くの事は今は話したくないと、マーロウ家での生活や婚約の真相については明言を避けた。旅立ちの朝、港にテリ
★★★8-4「愛の言葉をねだられることも、俺を試すような会話も幾度となく繰り返されたが、俺は応えた。言葉やキスでスザナの気持ちが落ち着くなら、こんなたやすいことはな・・・――キャンディ・・?」・・・ダーリン、まだお休みにならないの・・?マイアミのホテルで聞いたスザナの声がふと蘇り、キャンディは殆ど無意識に、ギュッと目を閉じ、固く結んだ手を胸にあてていた。覚悟していたとはいえ、テリィの口から他の女性との生活が・・――スザナとの生活が語られると、まるで一枚ずつ写真を見せられているよう
★★★2-4急病人を乗せた車は午前中の早い時間に村を離れ、病人の身体に障らない瀬戸際のスピードで北上した。町はシカゴとは全く逆方向だった。テリュースの心中は穏やかとは言い難かったが、子供の命には代えられない。マーチン先生の事前連絡の甲斐あって、町の病院は直ぐに母子を受け入れた。ここまでくれば直接旦那を捕まえられるから大丈夫とアンに言われ、多少心残りはあったものの、テリュースは直ぐさまハンドルを反転させた。「テリィ・・さん、あなたは命の恩人です・・、ありがとうございます!」去り際アン
★★★1-2翌日は朝から空が重く、午後になるとぽつぽつと降りだした雨が地面をぬらし始めた。「はあ~・・、降ってきたの」「・・ぬかるんだ地面に足をとられない様に・・気を付けて行って来てください・・」マーチン先生は、覇気がないキャンディの様子が気になっていた。今日のキャンディは包帯を巻く部位を間違えたり、診療代をもらい忘れたりと、集中力に欠けていた。(・・地に足がついていないのは、キャンディじゃろ)マーチン先生は一抹の不安を覚えつつも、往診に行く準備を終えた。「新患が来たら待たせてお
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★★★3-10何か所かロンドンの名所を案内してくれたテリィは、大きな寺院の前に車を停めた。「ここで待ってて」と言い残し、何やら受付窓口の人と話をしている。戻ってくると「中を見学できるよ」とキャンディに声を掛け、車から二つのトランクケースを下ろした。「君はこっちを持ってくれる?」テリィからシルバーのトランクケースを渡され、「なんで持ち歩く必要があるのよっ」と、不可解だったので訊いてみたが、「大切な衣装だから」と言われれば反論の余地はない。車上あらしにでも遭えば、最悪の場合公演延期にもな
続いてその他の本文から、探っていきます二次小説を書いたからこそ気づいてしまった、原作者のテクニックです。あのひとはテリィだと言っちゃってる「あのひと」とは、言わずと知れたキャンディの愛する人の代名詞。ファイナルの帯にも書いてあります。言い換えれば、「あのひと」という名前の登場人物です。アメリカに旅立つテリィを、キャンディが馬車で追っていくシーンにこのようなセリフが登場します。「どうか、どうか、間に合いますように…。テリィに会えますように…。わたしは、まだ
★★★7-13「フンギャー・・フグッ・・オンギャー」どこかで泣き声がする。車内を見渡すと、いつの間にか混雑し始めていた。都市が近いからなのか、夕刻の一時的な混雑なのかは分からない。通路にも人が立ち始め、押し出されるように赤ん坊を抱いた若い夫婦がキャンディの直ぐ横に立った。「あの、この席をどうぞ」即座に立ちあがったキャンディは、テリィに肘で合図を送り通路へ出た。「え・・いいんですか?」「赤ちゃん、お腹が空いているのかしら?・・立ったままじゃ無理でしょ?どうぞ」奥に座った若い母親
★★★1-5「ただいま・・・」「キャンディ、まあ!びっしょりじゃない。レインコートはどうしたのっ!」「ちょっと頭が痛いの…、みんなに移しちゃうと大変だから、先に休んでいい?ご飯はいらないわ」相変わらず様子がおかしいキャンディをレイン先生は気に掛けてはいたが、思春期の子供を持つ多くの母親がそうするように、本人から何か言ってくるまでは干渉しないでおこうと決めていた。「ちゃんと体を拭いて、温かくして寝るのよ」「おやすみなさい・・・」部屋に入ると机に置かれたままの白い封筒が、これは現実なの
★★★1-11草木も眠る真夜中、けだるいエンジン音がこの家の門前で止まった。暗闇で目の自由がきかない。冷たいポストに手を伸ばす。小ぶりだが厚めの封筒が一通だけ入っている感触に突き当たる。無理して帰ってきた甲斐があったと思ったのはその時だ。そこからは、先ほどと同一人物とは思えないほど俊敏な行動を見せた。勢いよくエンジンを再点火させると、深くクラッチとアクセルを踏み込んで敷地内に侵入し、急いで部屋の灯りをつける。差出人の名を確認するとようやく夢ではないことを実感し、笑みがこぼれた。
SONNETのあとがき物語は全て終わりました。如何でしたでしょうか。スッキリしていただけたでしょうか一番思い入れのある8章。5月の誕生石エメラルドの緑とキャンディの瞳の色との符合は、おそらく偶然ではないのでしょう。原作者の名木田先生、神です!!そして宝石言葉が「幸せ」と知った時にはもう鳥肌が立ちました。物語の中でキーワード的に何度も登場する言葉。これも瞳の色と掛けていたのだとしたら・・、ホント神業ですね。「エピローグ」の最後の数行は、FINALSTORYからの抜粋です。原
考察前のつぶやき「あのひとのことは、はじめから曖昧にしようと決めていました」下巻336これはファイナルのあとがきに書かれている、原作者名木田先生の言葉です。これを『どちらともとれるように書いた』と解釈する人がいるようです。そう思いますか?この言葉だけ見ると、そうかもしれません。なので「文脈」を見てみます。後に続く言葉を紹介します「あのひとが誰かをきちんと描くには、長い物語が必要なのです。あのひとを明かしてしまうと、長年の読者たちの夢を奪うことになるか
7章の中書き7章、お読みいただきありがとうございました。🙇♀️レ・ミゼラブルを出したのは、あのひとの本棚にフランスの文学書があったからです。ブロードウェーミュージカルでロングラン公演になるのは、ず~と後世ですが、その前身になる舞台で、エレノア・ベーカーも関わってるといいな、というブログ主の願いも込めて。ポニーの家の子がよそへ引き取られる際に、新しいパジャマを持たせるというエピソードは、アニメオリジナルのものです。巣立つ子供への先生たちの愛情がよく表現され、じ~んと
続いて、また別の視点からの考察になります。長い物語が必要なのは誰?「あのひとが誰かをきちんと描くには、長い物語が必要なのです」下巻336と名木田先生は言っています。長い物語は20年分、単に恋愛の成就だけではありません。どうでしょうか?検証してみます。アルバート編①恋愛期間②(結婚)③アードレー家、危機?エイボン川の町に引っ越し④第二次世界大戦勃発・アメリカへ帰国?既に漫画や旧小説において確固たる関係を築いているアルバートなら、恋の成就はあっさり成し遂げ
★★★2-10©水木杏子・いがらしゆみこ画像お借りしました夜通し走る寝台車つき特急列車。交通手段が電車に移りつつあるこの頃でも、長距離を結ぶ路線は相変わらず蒸気機関が主流だ。シカゴを中継しこの列車の先頭車両に乗り込んだキャンディは、ホッと息をついた。「ニューヨークへの直行便・・。あとは朝が来るのを待つだけね」もうすぐ会えると思うと、キャンディの顔は溶けかけたアイスクリームのようにしまりが無くなり、垂れてくる目じりを何度もキュッと持ち上げる。そんなキャンディの様子を、向かいの席
★★★7-8何がそんなに難しかったのかと思うほど鍵はいとも簡単に開き、水色のリボンで固く結ばれた束を手に取ったキャンディは、懐かしそうにそれを見詰めると、そっと胸に抱いた。「象嵌細工の宝石箱にしまおうかな」「・・これを?」黄ばんだ記事の切り抜きと封筒。ハガキも混じっている。ふさわしい収納場所とは思えない。「だって、テリィの手紙だもの・・。宝石箱は私の好きに使っていいんでしょ?持ち歩いていたデビュー当時の切り抜きが、既に王様のように収まっているのよ?これも仲間に入れてあげないと不公平だわ