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ささやかな目映い光が部屋の中央まで射し込んでいる。東宮の朝は以前と同じ女官や尚宮、内官が集まり賑わいを見せていた。女官の一人が不安気な面持ちで内官へ駆け寄る。『申し上げます。』『ん?何かありましたか?』『はい…実は…』話し始めた女官を差し置き、昨夜を思い出す内官。『殿下は昨夜雨に濡れた様子であったな…風邪など召されてないといいが……。チェ尚宮、念の為お二人に薬湯を用意しておいた方が良いかも知れぬ…』チェギョンの準備に忙しい尚宮を呼び止めた。『はい。コン内官。すぐに準備させます
今更ですが…私の中では韓ドラ語るうえでこれは外せないなぁあと前々から思っていたので、思い切って書き始めました。韓国ドラマ「宮(クン)~Loveinpalace~」韓流ドラマを好きな方にとってはホントに今更って感じですね。たぶん韓ドラのラブコメ部門では「冬ソナ」並みの知名度です。何しろ、2006年のドラマですから、今からかれこれ10年以上も前のドラマ。台湾版のイタキスと同じぐらい前ですね。でも、シーンのほとんどが宮中の様子なので、服装などは時代背景あまり感じない感じになってるかな?
「チェギョン、行こう」「う、うん…。あの、ゼイン、またね」シンは妻の肩を抱き会員制のカフェテラスを出た。ゼインがチェギョンを見つめていることは知っている。そしてシンの背中には、鋭く憎しみさえ感じられる視線を向けていることも。妻の肩を強く握った。「シン君…?どうしてそんなに怖い顔をしているの?」チェギョンが心配そうに顔を覗きこんできた。普段のシンならゆったりとした笑みで妻を安心させるところだ。けれどもゼインの挑戦的な視線が忘れられない。チェギョンには自分という夫がいるのだ。何を今さら自分
それは思い返せば奇妙な出来事だった。いつもの朝、いつもの風景ではあったが何処か空気が違う。シンは目覚めて感じた胸騒ぎにすぐ傍で安らかに眠るチェギョンの手を握りしめた。『…ん…シン君?どうしたの?』『いや、、何となく…寒くないか?』『大丈夫…もう少し…このままで』?『ん?』『だから、もう少しこのまんまでいたいなって…離れたくないの…』チェギョンは腰に腕を回すと顔を隠すようにシンの胸に丸くなった。『…尚宮から聞いたか?今日の午後は国立博物館の竣工パーティーがあるが…来れそうか?』
宮は薄暗い雲に包囲されているようだった。現に後日ある一定の時間、宮の上空の雲が渦を巻いていたと世間を騒がせた。チェギョンはシンや慌ただしく消えたヨナを思い不安を覚えていた。『お前はここにいろですって。。。何よ…ヨナは私の友人よ!』意を決すると立ち上がる。シンはヨンジンなる青年に対峙していた。コン内官も然り。『君は何処からきたんだ?』『どこから…って…まぁマカオに住む前はこの辺りだけど』『先程、姉上からの連絡で分かったことだが、防犯カメラを解析した。この東宮殿へは正門からの訪問では
シンの滞在するホテルの一室。一際重厚な扉の前には物々しい雰囲気で護衛官・イギサが立つ。チェギョンにも本国では三名の女性イギサが付く。タイへの公務中のシンを訪ねたユルはかつて皇太子だった。僅か5歳の頃まで皇太子として景福宮で暮らした。父・孝烈皇太子が急逝したため第二皇位継承権の叔父が帝位に就くと皇太子の位は従兄弟であるシンへと移行した。そして、母ファヨンと共に宮廷を追われた。それさえ無ければチェギョンの許嫁は本来、義誠君と呼ばれたユルであった。そんな昔に思いを馳せながらシンは口を開いた
『結婚しないか』ある日の午後、無人の教室の片隅で彼女に告げた。ヒョリンは瞳を丸くして、それでも冷静に答えた。『私達はまだ学生よ?』確かに彼女の言う通り、現実的に無理がある。皇族の結婚は早く黙っていれば勝手に妃を決められる。宮家の言いなりになり知らない女と結婚するのは癪に触る。皇太子という特殊な立場故に一般的な常識が皆無かまたは欠如した思考に陥りやすかった。『結婚』の発言自体、皇太子として生きてきたシンにして余りに突発的である。ヒョリンからすれば驚いて当然の申し出だった。厳しいしきた
チェギョン14歳の時のことをシンは話し始めた。「あのとき、チェギョンは『発表会に出るのが嫌だな』ってしょっちゅう嘆いただろ?」「そう言えばそうね」妻が思い出したのだろう、微笑んだ。「あの発表会は、どうしても納得できるだけの演奏ができなかったの。練習が足りなかったから」「難しいって言ってたしね」「難易度が高い曲を選んだからかな」チェギョンは今でもバレエやらクラッシックのリサイタルやらが好きだ。そのために、シンはホールのオーナーであることを利用して、よくチケットを手に入れてやっている。
「チェギョン!チェギョン・ボーナム!」「ゼイン?」名前を呼ばれてチェギョンが振り返ると、昔、近所に住んでいたゼインが立っていた。チェギョンが彼を“幼馴染のゼイン・レイノルズ”だと認識できたのは、茶目っ気のある黒い瞳と、肉厚の唇、黒いクルクルした髪が全く変わっていなかったからだ。それ以外のところは全く違うけれど。「すっかり紳士になってて、見間違えちゃった」近寄ってきたゼインが、大きめの口を開けて笑った。「チェギョンこそ大人びてて驚いたよ」「当り前よ。あれから何年たったと思っているの?」
季節は移る。宮殿内を吹き抜ける風は暑さを和らげていく。かつて顔を合わせば良くない感情を互いに向け合っていた幼い皇太子夫妻は今はなく、紆余曲折の後徐々に溶け合い、今では側近達が困惑するほどの熱愛ぶりである。公務の合間を縫っては妊娠中の妻の様子を見に東宮に戻る。愛妻家の夫となったシンを内官は感慨に浸り見ていた。2人の住む洋風の建物は王朝文化からはかけ離れてはいるもののこの宮廷に新しい風を運んだ新婚夫婦らしいものだと内官は返り見ると1人頷いた。『コン内官…』硬い表情で公務を終えたシンが内官に
天井を仰ぐチェギョンは胸が軋み、切り刻まれた様な痛みが襲っていた。紛れもなく今我が身が存在するのは、久方ぶりの【妃宮の部屋】。宮家に嫁し、東宮妃として此処に迎えられたばかりのあの頃と寸分変わりはなかった。だが、今は随分と変わって見える。ここだけでなく、目に映る全てが何処か違って見え心許ない気持ちを味わう。『他人の部屋みたいだわ…』呟くとチェギョンは孤独感を払拭するように臍より僅かに下った部分にそっと手を当て、ホッと一息の深呼吸で精神の安定を図った。シンは新婚らしい夫婦の睦みも味わう前に
大役を任された父親は、迷う事なく妻に話す。「あの二人が一緒になる事は神の定めた運命だった!そして、ヨン君が明国を吹き飛ばしたときは神々しい神か仙人の様に思えた。二人離れ離れになった時はウンスは毎日星に願いを込めたと聞いた!よしっ!」父親はサラサラと名前を書いた。「まあ、お父さんさん!私は誉めた事ないけど、初めて誉めてあげるわ!素敵ね。」「なあ?母さん?そろそろだろうな?」「そうね。でも笑って送り出してあげましょう!いつでも行き来できるんだから。」「そうだよな。楽
『改めまして本日は、この様な茶会に招いて頂き、ありがとうございます。妻、チェギョンです。この様な登場に皆様は大変驚かれたと思いますが、次代のこの国を担う子を授かり体調優れぬ中、私が一人にならぬ様に皆様に認めてもらいたい一心で参じた様です。これからも皆様の一員として宜しくお願いいたします。』シンはチェギョンを呼び寄せると、並び立つ。先程の厳しい表情とは打って変わって参加している人々が驚くほど柔らかな表情を見せた。『皆様。紹介いただきましたチェギョンです。民間から嫁ぎ、躾も乏しくそぐわぬ私を長い
―――これで良かったの…?閉められた窓の外から聞こえる歓声のざわめきを感じながら、チェギョンはその小さな胸にもう何千回と問いかけた事柄を、再び取り出し、繰り返した。例え、答えが『NO』だとしても、引き戻すことなど不可能だと彼女には分かっていたけれども。「用意はできたかな?」男らしい声が聞こえ、チェギョンは振り返った。チェギョンが考えていたよりずっと近くに、シン王子が花婿らしい黒と白の完璧な装いで立っていた。「ええ、殿下」長く豊かな睫毛が、チェギョンの美しい薄茶色の瞳を覆い隠してしま
宮にはすっかり静けさが戻っていた。春の祝宴会は追放から帰還した妃宮の為の催しであり、誰もがその突然の帰還に納得し祝福した。その一日を緊張で過ごしたチェギョンには疲労の表情が現れていたが数日経っても体調は優れぬままだった。シンは事を性急に動かした事に後悔の念が走る。一刻も早く妃宮の帰還を人々に認めて欲しかった。祝宴の後の晩餐会は殆どが仲間内での集まりであった。チェギョンの弟はシンの友人ファンと意気投合し、ガンヒョンは相変わらず冷たくギョンを遇らうが其処には一方通行ではない何かがあった。ヒ
宮廷内の庭を解放した春の祝宴会は宴もたけなわ。簡易の記者会見が終わると和やかな宴会に変わり国の要人達はシンとチェギョン夫妻に挨拶をと列が出来た。誰が見ても火を見るより明らかな歓待ぶりである。記者たちも誰が何番目に挨拶したと事細かに筆記していた。かつては孝烈皇太子の友人としてファヨンに手を貸していた記者もいた。皇室の信用を失墜させる事に加担した記者は国外へ逃亡を図る直前にシンに呼び出された。記者としての業界の信頼を無にし立場を追い、この国で一切の仕事が出来ないようにする事は造作もないが報
日の落ちた東宮殿は女官や内官が慌ただしく行き交う。『いたか?』厳しい口調で女官の一人を呼び止め、女官は思わず肩を竦めた。『いえ…殿下申し訳ありません…』女官は深々と頭を下げる。『……』自室を右往左往し、更に思いついた様に突然チェギョンの部屋へ向かうシン。大きな音を立て扉を開く『…何処に行った!』シンは立ち止まるとチェギョンのベッドへ腰を下ろす。天井、カーテン、部屋の様子を見渡すと溜息を漏らした。彼女が帰還した途端に色彩を取り戻した妃宮の部屋に改めて妻の存在感を知る。『…チ
友人達はそれぞれに昔語りを始める。春の庭は開放され時折冷たい風が邸内を駆け巡る。『あのさ、妃宮様。。』『ファン君?』『あー、、えっと…こないだシンに電話かけさせたの俺。最近発掘した新人女優…まぁけど…ごめんな。知らなくて。そんな事になってるとは…ただ本当にアイツ…シンが元気なかったのは気になったからさ。』非礼を詫びに来たシンの友人にチェギョンは微笑んだ。『…私が居なくても。シン君には大事な友達もいるし。大丈夫かと思ってた』『なになに?シンの話?』ギョンとインもやって来る。『そう
得体の知れない不安におそわれたままのチェギョンは今しがた去っていった青年ヨナを思っていた。『他人じゃない…』単に弟に似ているだけではない。。夫シンが嫉妬心に苛まれる程、チェギョンの中でヨナという青年にはどこか近しい感覚を覚えていた。しかし、去り行く真際にチェギョンに接近した事で、チェギョンは全くあり得ない事に気付いてしまった。『そう…だってシン君に似てるのよ…似てる訳ないけど…でも似てる…』不可解で霧の峠を歩んでいるように不思議な感覚である。雲の中にいるようで、それでいて意識はハッキ
「何を読んでるの?」シンが暖炉の前の心地よい場所で本を読んでいると、後ろから妻の細い腕がにゅっと伸びてきた。頬にチェギョンの柔らかな唇を感じた。「暇つぶしの小説さ」「そう。どんなストーリー?」横からちょこんと顔を出した彼女の髪が、カーテンのようにさらりと落ちていく。ほっそりとした腕に、絵の具が幾筋もついていた。半年一緒に暮らしてみて、妻の趣味を知った。彼女はドールハウスづくりが好きなのだ。それもアンティークなモノだけでなく、モダンな近現代のドールハウスを嬉々として作っている。「自分
「感冒、いわゆる風邪だね。薬を処方してほしい?それなら出すけれども、必要ないならやめておくよ」シンは液晶の画面から、患者の顔に視線をうつした。ごく最近、チェギョンの父のクリニックの患者になった若者―――ニック・モーガン―――が、疲れた顔をしてゴホゴホを咳をしている。「喉はそれほど腫れていないけれども、抗生剤を処方してもいいよ」「早く治したいから、処方してください」「わかった」シン「が電子カルテに記載していると、ニックの視線を左手に強く感じた。「ドクターは、結婚してるんですね」ニック
シンが起きた時には、チェギョンはベッドにいなかった。朝の苦手な妻にしては珍しいことだ。彼は大きな体に似合わない俊敏な動きでベッドを抜け出し、バスルームへ消えた。着替えをしてキッチンへ向かうと、彼女は既に身支度を整えていた。今日は大学へいくのだろう。薄いピンクのニットアンサンブルに、白い膝上のプリーツスカートをはいた妻は、その愛称の通り、『妖精』のようだった。彼女が立っているキッチンがいつも以上に華やいで見える。「シャワーの音を聞き逃したよ」シンはチェギョンの後ろから柳腰を抱きしめ、耳の後
チェギョンは改めて皇帝陛下である義姉、へミョンに呼ばれ、彼女の自室にいた。皇太子のスキャンダル、妃宮と義従兄ユルとの噂、皇太子夫妻の不仲説が王室を揺るがし、廃位、廃妃問題が勃発した。義誠大君との権力争いから宮廷内での放火事件まで起き、それを収める為にチェギョンは国を出た。皇太子妃の不在の間、さぞ王室は無事に平静を取り戻しただろうと想像していた。しかし、へミョンによれば、世論の反感緩和は一筋縄ではいかなかったらしい。『考えが甘かったみたいね…貴方を国から追い出せば反省したと国民は皇室を許すだ
どこからか鳥の鳴き声が聞こえる。チェギョンはゆっくりと覚醒していく自分を感じた。瞼はまだ閉じているけれど、明るい朝の日差しを感じるし、すこし湿った風が肩を撫でていく。ふいに肌寒さを感じ、チェギョンは身震いをした。「寒いかな…」低い囁き声が聞こえ、大きな手が肩を覆ってくれた。その温かさに彼女は満足げなため息を一つついた。白いユリを図案にしたらしいキルトをふわりと肩から首まで覆ってくれた。彼女は重みで凹んだマットレスに引き寄せられる振りをして、隣に横たわる大きな体にすり寄ることにした。体を動か
無事に7年とちょっと越しのその後物語を書き終える事ができ、非常にスッキリした気持ちです。思えば、宮を見終えてからが始まりでした。2周、3周する内に、続きが見たいと願うようになりました。その後物語はラストだけが頭に浮かんでいてそこに向かって書き出したわけです。最終的な終着はここに。。それだけを念頭に書き始めておいて気付けばあちこちのドラマにうつつを抜かし、寄り道しまくりでなかなか進めなくなり、そうこうしている内に内容を忘れてしまったという救いようがないパボな私が悪い訳ですが…今思えば必
かならず最初にはじめましてをお読みください俺の祖父先帝・聖祖陛下を国葬で見送ったその年韓国の秋は足早に過ぎてゆく「シン遂に皇太子に即位するそうだねおめでとういつも自分を見失わないで君らしく素敵な皇太子に」イギリスの冬の景色が描かれた絵葉書は昨日ユルから届いた俺は絵のことは良くわからないがユルの描くイギリスの風景はどれも美しかった俺はそれを大事にアルフレッドを座らせているいつもの青い箱に仕舞った明日俺はこの国の皇太子になるベッドサイドの窓から見える東宮
北斗の拳第1巻の考察、その後編です。さてKINGの幹部2人目は…ダイヤ!売れないヘビメタバンドみたいな格好してますが、実は北斗の拳外伝にてダイヤの過去が語られています。ダイヤの本名は山村たかし、顔のメイクは対人恐怖症対策であり、核戦争前はクラブ(本名鳥谷こうへい)とヘビメタバンドを組んで活動しておったんです。この設定、面白すぎるわ(笑)そんなダイヤの声は郷里大輔。そうです、ロビンマスクと同じ声です。さてケンシロウをおびき出すため村人を拷問するダイヤ。これで支えられる娘が凄い。そんなダ
「自分のベッドが良かったかな」ドレッサーの前で髪をとかしているチェギョンの肩に、シンの大きな手が乗った。「私のベッドでは、二人でゆっくり眠れません」子どもの時から使っていたチェギョンの私室のベッドは、夫婦二人で眠るには少し窮屈だ。そう、チェギョンとシンには。だから、二人は一番広いゲストルームのひとつを使っている。ベッドで夫がどんなに淫らな愛撫を与えてくれ、それに応じる自分はとても“行儀のよい妻”ではないことを思い出し、チェギョンは頬を染めた。そんな彼女の様子に彼が気づいた。目を細め
「チェギョン、何ですか、その態度は。お上品だとは言えないわよ」「いいのっ。ママは口出ししないでっ」チェギョン・バセットは母を睨みつけた。そんな彼女にシェフィールド夫人は呆れた顔で目を見開き、それからチェギョンがしがみついている男性と視線を合わせた。「困った子ね。ごめんなさい、シン卿」「僕は困っていませんから」シン・バセットは新妻のそんな態度をむしろ喜んでいるようだ。白と黒のモノトーンは、彼をいつも以上に上品な人物に仕立て上げていた。実際のシン・バセットは侯爵家の跡継ぎの彼自身を隠すかの
「どのウエディングドレスも素敵で、困っちゃう」チェギョンは眉を下げた。チェギョンの婚約者、シンの母親であるリーズ侯爵夫人が「どれもチェギョンに似合ってたものね。全部着せてあげたいぐらいよ」優しい答えを返してくれた。チェギョンの母であるシェフィールド夫人が水を差さなかったら、彼女の気持ちは高止まりしていたのに。「でも、挙式まであと1年半もあるのよ。これから、また素敵なデザインのドレスが出てくるわ。そのたびに迷っていたら、いつまでも決まらないわよ」母の言葉にチェギョンは口を尖らせた。「分